環境に配慮して紙ストローを導入する企業が増える中、国産ストローメーカー最大手「シバセ工業」(岡山県)は、紙ストローは作らず、プラスチックストローの生産を続けている。国内外で広まる「脱プラスチック」の波をどう受け止めているのか。ジャーナリストの牧野洋さんがリポートする――。(第15回)

「ニュースを見て10秒で決めた」

「ニュースを見て10秒で決めた。プラスチックだからこそ、環境を守りながら豊かな生活を実現できるんです」――。

日本一のストローメーカーであるシバセ工業を率いる磯田拓也、63歳。2018年に脱プラ運動が盛り上がるなか、先進7カ国(G7)で「海洋プラスチック憲章」が採択されると、迷わずにプラスチックストロー生産の継続を決めた。

磯田拓也氏。1960年生まれ。岡山県立高、大分大学工学部卒業後、日本電産に入社。99年にシバセ工業に入社し、工場長を経て2005年に社長就任
撮影=プレジデントオンライン編集部
磯田拓也氏。1960年生まれ。岡山県立高、大分大学工学部卒業後、日本電産に入社。99年にシバセ工業に入社し、工場長を経て2005年に社長就任

社員数50人の企業が直面した「脱プラ運動」

「ストロー発祥の地」と呼ばれる岡山県浅口市を本拠地にし、飲食店向けの国産業務用ストロー生産で5割のシェア(自社調べ)を握るシバセ工業。1949年にそうめんの加工・販売でスタートし、それから20年後にプラスチックストローの生産へ大転換した。

祖業の名残は今もある。本社敷地内で存在感を放つ三角屋根の木造建築だ。1949年の創業時に建てられたそうめん熟成用の蔵であり、現在はストローの保管庫として使われている。

シバセ工業敷地内にあるストローの保管庫。同社のオリジナルキャラ「むぎちゃん・かんくん」のイラストも
撮影=プレジデントオンライン編集部
シバセ工業敷地内にあるストローの保管庫。同社のオリジナルキャラ「むぎちゃん・かんくん」のイラストも

シバセ工業は年商5億円・社員数50人の中小企業であり、世界的な脱プラ運動の直撃を受けたらたちまち押しつぶされてしまいそうだ。プラスチックにこだわり続けて大丈夫なのだろうか。