「ザ・昭和」的結婚感を維持している
「バリバリ働いて人生を切り拓いていきたい」という女子学生も増えていますが、大半は昭和時代に生きてきた私世代とほとんど同じ、「ザ・昭和」的結婚観を維持していることに、内心かなり驚かされてきました。私が幼少期から青春時代を過ごしてきたのは、スマホもインターネットもない時代です。情報収集は新聞や雑誌かテレビまたはラジオ、あとは人から聞いた話くらいの昭和時代には、「結婚の在り方」や「家族の在り方」も、周囲の極めて狭いコミュニティに生きる人々の事例しか知り得なかったものです。
「20代前半で結婚し、夫は正社員、妻は専業主婦として世帯を築き、子どもは2~3人持ちいずれはマイホームを」という夢は、何も独創的な発想でも何でもなく、単に育った環境や親戚、もしくは周囲の大人たちも皆そうだからでした。そうでない「生き方」「結婚観」を知らなかったからこそ、疑問なく進むことができた人生のレールだったのです。
しかし今は、令和の時代です。当然ながら、現在の20歳前後の若者と、私が生きてきた時代は異なります。昭和・平成・令和と、時代や社会、経済状態は激変しました。白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が「三種の神器」として豊かさの象徴であった1950年代に比べ、現代の若者は一人ひとりがスマホというコンピュータを手のひらに持ち、インターネットで世界中の情報にアクセスし、多様な文化・価値観に接するようになりました。
「自分だけは大丈夫」と思い込んでいる
しかし、どれほど社会が変わろうと、人々が思い描く「日本人として幸せな人生の理想像」に大きな変化がないのは、いったいなぜなのか。疑問に思った私は、少々意地悪かもしれませんが、学生たちに向かって、あえてこんな言葉をぶつけてみることがあります。
「40歳以下の日本人の4分の1は一生結婚できないんだぞ」
「結婚しても、3組に1組は離婚するんだぞ」
と。しかし、彼らにとってこんな脅しは、ほとんど意味はないようです。さすがに社会学専攻の学生たちですから、こうした数字は頭では理解しています。でも、「自分はその中には入らない」と、根拠なく信じている。「自分だけは大丈夫」だと思い込んでいるのです。不安を持つようになった学生もいますが、彼らも、「婚活するなら早い方がいいですか」「離婚しない相手を見極める方法はありますか」などと質問してきます。