「結婚感・家族観」をアップデートしなかったツケが噴出

にわかには信じたくない現実ですが、ビジネス業界はいち早くその変化を察知し、「おひとりさま」向けサービスや商品、ビジネスを展開してきました。子育てや介護がなければ、可処分所得は多くなります。単身者向けを意識した高額商品やブランドグッズの購買層は、こうした「おひとりさま」がメインとなり構築されてきたのです。昨今の女性は焼き肉店でひとりで食事をしたり、ひとりカフェで過ごしたり、ひとり映画などにも抵抗はありません。新型コロナ禍の影響で、「ひとりがいい」という傾向は、加速した感もあります。この間に、ひとり旅や「ソロキャンプ」も盛んになりました。

さらに、おひとりさまの将来不安を見越して、生命保険会社も家族のための死亡保険よりがん保険など自分の将来リスクに備えた保険に力を入れるようになっています。今後は、高齢独身者の「終活(人生の終わりのための活動)」向けの様々な商品が開発されていくでしょう。

このように確実に時代は変化しているにもかかわらず、人々の意識の根底にあるのは、相変わらず古き良き昭和の「結婚観」「家庭観」というギャップ。政治家はもちろん、国民の多くが、昭和の価値観を引きずりながら、つまり「結婚観」「家庭観」をアップデートさせないまま、平成、令和を生きてしまったツケが今、様々な方面で噴出しています。

現代の若者が「イメージ通りの結婚」を手に入れるのは無理

繰り返しますが、「ザ・昭和」な結婚観・家庭観はもはや、非現実的な虚像になりつつあります。人口動態的にも経済的にも、働き方や就労スタイル的にも、今の日本では持続不可能です。

山田昌弘『パラサイト難婚社会』(朝日新書)
山田昌弘『パラサイト難婚社会』(朝日新書)

昭和の結婚観・家庭観は、夫である男性が終身雇用を前提に、定年まで安心して仕事に従事できる環境が用意されてきたからこそ可能だった結婚スタイルでした。外で働く夫に対し、一方の妻たる女性は、夫を支え、家事・育児・子どもの教育・時には両親の介護を含め、家事全般を担う。「男女分業型夫婦」だからこそ可能だった、「ザ・昭和」な結婚スタイルだったのです。

しかし令和の今、「終身雇用」「経済成長」「人口増加」を大前提とした働き方、所得収入スタイルは、大きく崩れました。親世代にはかろうじて可能だった「結婚生活」を、現代の若者の多くは手に入れることができません。要するに、“昭和のまま”の脳内イメージと現実との大きなギャップが、日本人の「結婚」を難しくしているとも言えるのです。

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