『サザエさん』から『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』へ

では、昭和時代から続くオールドタイプな「日本人として幸せな結婚観・家族観」とは、具体的にどのようなものなのでしょう。日本で夫婦別姓や同性婚の議論になると、大抵「日本古来の結婚観・家庭の在り方を崩壊させてしまう」という意見が湧き起こります。しかし、その実態はどういうものなのか。

おそらくこうした発言をする人々の脳裏に浮かぶのは、「夫婦2人に子どもが2~3人」仲良く茶の間のテーブルを囲む姿ではないでしょうか。より高齢の人ならば、そこに「祖父母と同居」の光景も付随されるかもしれません。要するに、漫画やテレビアニメでお馴染みの『サザエさん』一家のような図です。波平とフネの夫婦のもとに生まれたサザエ・カツオ・ワカメの3児。そこに長女サザエと結婚したマスオと、彼らの子ども、タラオが同居するスタイルです。

三世代、合計7人が一つ屋根の下に暮らす「ザ・昭和」な家族像は、もう少し時代が下ると、『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』などに見られる「核家族」にシフトしていきます。さすがに三世代同居は少なくなり、親と子の二世代同居がスタンダードになっていきます。

リビングルームに集まる3世代家族
写真=iStock.com/maruco
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「単独世帯」が4割弱を占める現代日本

しかし、こうしたノスタルジックな家族像は、現実にはもはや少数派です。『サザエさん』に見られるような「三世代同居世帯」は、1980(昭和55)年時点では全世帯中、約2割(19.9%)を占めており、『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』的な、「夫婦と子ども世帯(42.1%)」と合わせると実に6割以上も存在していました。半数以上ともなれば、世間のマジョリティと呼んでも差し支えないでしょう。

ところが2020(令和2)年になると、その様相は大きく変わってきます。国勢調査の「世帯の状況」によると、三世代世帯などが含まれる「その他の世帯」は全体でわずか7.7%を占めるにとどまり、「夫婦と子供から成る世帯」も25.1%まで減少。つまり両方合わせても3割強です。代わりに増えてきたのは、「単独世帯」の38.1%。いわゆる「おひとりさま」社会の誕生です。

三世代同居はおろか、二世代同居も減り、一世代の夫婦2人生活も減少……。つまり、ひとりで暮らす単身世帯がマジョリティとなっていく社会が、現在の日本社会の姿です。