“話し上手”より“話させ上手”になる

饒舌じょうぜつで自己アピールが得意な人は、華やかな印象を与えます。

しかし、仲良くなれるかは別問題。ほとんどの人は他人の話を聞くよりも、自分の話を聞いてもらえるほうが嬉しいもの。それだけ、自分の気持ちを解放して、自分をわかってもらうことには、心の底からの“快感”があるからです。

会話というのは、自分の話をする“主役”よりも、相手にスポットライトを当てて話をさせる“脇役”のほうが得をする仕組みになっています。

とくに、ただ話をさせるだけではなく、相手が話したくなるテーマを見つけて振ってくれる“話させ上手”な人は、一緒にいてほんとうに楽しい。

「面白いなー。それでどうなったの?」「そもそも、どうして挑戦しようと思ったの?」「それ、すごいね。うまくいくヒケツはなに?」なんて質問をして話を引き出してくれるので、話していて心地よく、これまで気づかなかった自分を知ることもできるのです。

そんな相手には当然、「この人ともっと話したい」と好意をもち、「この人のことを知りたい」と興味がわくはずです。“話させ上手”な人は、一見、目立たなくても、どこに行ってもいち早く打ち解けていたり、顔が広くてあちこちから声がかかったり。一目置かれて、人間関係の中心にいることも少なくありません。

私は職場や住居を転々としてきたので、どこに行っても、自分が話すよりも、相手に話してもらうことを心がけてきました。「相手がどんな性格で、なにが好きで、なにを嫌と感じるか……」を“観察”すると、相手の話の延長線上で、自分のことも「じつは私も」と効果的に話せるし、相手の力になることもできるのです。

たとえ相手が小学生でも、フラットな目線で相手が話したくなる話題を見つけて、わかりやすい言葉で話し、興味をもって「なに?」「どうして?」「どんな感じ?」と質問する。相手が楽しく話してくれたら、自分も楽しいと思う……。そんな「お先にどうぞ」のスタンスが、やわらかい関係をつくってくれるような気がするのです。

「小さな喜び」「小さな苦労」に共感する

「今日、嬉しいことがあってね。ふふ……」なんて、日常のささやかな喜びを話したとき、「それはよかった!」「こちらまでワクワクしてきた」「わかる、わかる」と自分のことのように喜んでくれる人、あなたのまわりにいませんか?

そんな「共感力」のある人がいると、嬉しくて安心するもの。「この人ならわかってくれる!」とつい本音を話したり、思わずはしゃいだりしてしまうこともあります。

また、仕事、人間関係、恋愛、育児、介護など自分の身に起きた小さな苦労を、「それはたいへんだったね」「辛かったね」「よく耐えたね」なんて親身になって理解してくれる人がいるのも心強い。味方を得て報われたような気持ちになるものです。

「共感力」とは、人の気持ちや感情を思いやり、自分のことのように感じる力のこと。社会のなかで人と共存して、助け合うための力でもあります。

「女性同士は共感でつながる」と言われることがありますが、古来、まわりと協力して子どもを産み育てるため、互いの気持ちをわかり合う必要があったのでしょう。

現代は男女関係なく、共感力のある人がモテる時代。部下の気持ち、夫や妻の気持ち、顧客の気持ち、初対面の相手の気持ちなど、相手の立場になって「これは嬉しいだろうな」「これは辛いだろう」と共感できる人はどこに行っても大切にされるはず。

言葉で伝えなくても「助けを必要としている」「いまはそっとしておいてあげよう」と察して行動できるので、一緒にいると心地よく、愛されるのです。

反対に、「私に言わせれば、甘えすぎ」「そんなに嬉しい?」「もっと○○すればいいのに」と、自分目線だけで話す人からは、人は離れていくものです。

相手が「こんなことがあってね」と出来事を話したときに、「それは安心だね」「たいへんだったでしょう?」と相手の感情に変換してリアクションすると、共感する練習になります。相手の気持ちをわかろうとするためには多少気苦労も伴いますが、やさしさや気配りは、必ず自分にはね返ってくるのです。

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