初対面の相手でもコミュニケーションが上手にとれる人は、どんなことを心がけているのか。教育学者の齋藤孝さんは「誰とでも感じよく雑談できる人が知っている、『ほめ方』や『話を切り上げるタイミング』のコツを伝授します」という――。

※本稿は、齋藤孝『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

ビジネスの会話
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

「10秒雑談」だけで人間関係は変わる

今の世の中は会社でもどこでも忙しい人が増えています。

その分、意味のないコミュニケーションがとりづらくなり、ギスギスした感覚を覚える人もいます。

とはいえ、飲み会やランチの場を設けようとなると、「そういうことに時間やお金を取られたくない」と考える人も多いと思います。

そんなときは、ぜひ「10秒雑談」を試してください。

忙しい中でも、一言二言パパッと会話を交わして、それで人間関係を保つのです。

たとえば、こんな感じです。

(出会い頭に)
1.「○○さん、会議でのあの発言、よかったですよ」
「ありがとう」
「勉強になりました。では」

2.「おはようございます。今日はかなり寒いですね」
「寒いね。今年初めて手袋を出したよ」
「私もそろそろ使おうかな」

たったこれだけでも、人間関係は変わってきます。

こんなふうにさりげなく話をして、床暖房のように、その人との関係をじんわりと温めておくと、いざ大事な話があったときにも、スムーズに進められます。

5~10秒の雑談ですから、中身はなんでもかまいません。

気軽に声をかけてみましょう。

タクシーや美容院で話すことがなく、気づまりだという人も、この方法は使えます。

嫌味にならないほめ方の“最初の言葉”

嫌味なくさわやかに相手のことをほめるには、いいことを言おうとか、こんなふうに言おうなどとあまり考えずに、「感じがいいですね」などと、手短にスパッと言ってしまうのがよさそうです。スパッと言い切ると、さわやかさを感じさせることができます。

タイミングとしては、気づいたときに、さっさと言ってしまいます。

誰かに感じのいいお店に連れていってもらったときも、入ってすぐ「すごい、イマドキですね」「きれいなお店ですね」と、スパッと言い切る。ムリして頑張って「このインテリアは、アール・ヌーヴォーを意識していて、1920年代をうまくオマージュしていますね」などと、凝った言い回しをしなくてもかまいません。

大事なのは、そのときの気持ちを素直に出せているかです。

人は、下心のある物言いに敏感に反応します。「何か買わされるんじゃないか」「裏があるんじゃないか」と、瞬時に心配してしまいます。

そう思われないためには、最初の「あっ」が大事です。

「あっ素敵ですね」と「あっ」が入ることで、用意したコメントではないとわかります。今そこで気づいたことが自然に言葉に出た、という感覚が大事です。

そして、感じたことを言葉にして、手短にほめる。すると、さわやかな感じになります。