不安心理を取り除くためには

上司の心得としては、オープンなコミュニケーションを心がけることです。いろいろな批判があるとしても、オープンな場でどんどん議論を戦わせ、優れた意見は採り入れていけばいいのです。

たとえば、会社の事業を未知の分野や未知の領域へ拡大していこうとするときは「あんなところに出ていったって、投資を回収するのに何十年もかかる。その間ずっと赤字を積み重ねるのか。やりすぎじゃないか」といった反対の声が必ず出てきます。

当社でも、積極的な海外展開を始めた当初は、同じような声が出てきました。私自身は海外進出については「100%成功する」と確信していましたが、周囲はそこまでコミットできないという雰囲気でした。

反対意見が出るのは、背後にそれだけ不安な気持ちを持っている人がいるからです。社内の人たちから取引先まで、不安を共有する人たちの声を代弁するものでもあるでしょう。未知のことに不安を持つのは、無理のない面もあると思います。

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後継者があなたの悪口を言っていたら

しかし、失敗をおそれて挑戦をやめてしまったら、その会社に未来はありません。業界3位のファミリーマートが国内事業だけで逆転するのは客観的に見て難しい。上を目指すとしたら、海外、特に成長著しいアジア地域に出ていくしかないのです。

役員会で消極論が出そうだなと感じたときなど、私はよく「君たちは幸せだ」と言いました。成功したらみんなが「俺たちは苦労して走りまわって、事業を成功させた」と誇ることができるし、運悪く失敗しても、「上田の経営判断ミスのせいだ」と言うことができる(笑)。「どっちにしても損はないよ」と説いて、役員たちの不安心理を取り除いたものでした。

もっとも、悪口が人格攻撃に及んでいる場合は事情が異なります。そのときはやはり、「排除する」しかないでしょうね。

ファミリーマート社長 上田準二
1946年、秋田県生まれ。県立横手高校から山形大学文理学部に進み、卒業後の70年、伊藤忠商事に入社。畜産部長、プリマハム取締役などを経て、2000年に顧問としてファミリーマートへ。02年より現職。
(構成=久保田正志 撮影=的野弘路)
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