家族が喜ぶから週1回だけデイサービスへ行く
ただ、あまりにわがままだと家族に疎まれることもあります。そこらへんはうまくやりましょう。コツは「かわいくわがまま」です。不機嫌な顔はせず、気が進まないということを話します。子どものわがままとは違います。道理があるはずなので、やりたくない理由を説明しましょう。
また、ある程度、妥協して、その中でわがままでいることもできます。
デイサービスへ行くのは嫌だけど、家族が喜ぶから週1回だけ行くことにしたYさんがいます。Yさんは家の中ではやりたいことがいっぱいあります。
本は読みたいし、韓流ドラマは見たいし、庭の手入れもしたい。退屈はぜんぜんしていなかったのですが、別居している子どもたちがデイサービスに行かせたがります。
いちばんの目的は筋力を鍛えること。Yさんがインドア派なので、運動不足で筋力が弱ると心配しているのです。Yさんは家事と庭仕事で十分運動になっていると考えていましたが、要支援1なのにデイサービスに行かせたがる子どもたちの気持ちをYさんは汲みました。
子どもたちは、ひとり暮らしのYさんがケアマネジャーさんや施設の人とつながることで、見守りも強化したいという気持ちがありました。それに、子として親のために行動したという満足感も得られます。
Yさんは、デイサービスのちぎり絵やカラオケには参加しないで本を読んで過ごせるなら、ランチと運動をするつもりで行くと承諾しました。ケアマネジャーさんは、特別にお食事の評判のいい施設を選びました。
柔軟性のあるわがままが長生きにつながる
このこともYさんは、威張って要求するのではなく、ケアマネジャーさんにお願いする気持ちで話しました。その話を聞いて、子どもたちは「わがままね」と言いましたが、まずは行けばどうにかなるだろうと思って安心しました。
Yさんは、今は週2回デイサービスに通い、レクリエーションの時間には本を読んでいます。「家だと、家事やら庭仕事で集中できないけれど、デイサービスのソファは集中できる」と話しています。
仲のいい同年配もできました。韓流ドラマのファンがふたりいたのです。ランチのときは、一緒の席にしてもらい、ドラマの感想を話し合います。それを聞いてスタッフが「カラオケのときに別室で韓流ドラマを見ますか?」と聞いてきたそうです。サービスのつもりだったのでしょう。
Yさんたちは言いました。「韓流ドラマはね、ひとりで見たい。ひとりのほうが思う存分浸れるから、結構」。ひとりで楽しみ、楽しみを分かち合う、とてもわがままでよい考え方だと思いました。
Yさんは毎年、脳機能のテストを受けていますが、脳の機能は衰えていませんし、デイサービスのおかげで筋力がついたのか、家の中でつまずくことが少なくなったそうです。デイサービスで専門の方に運動を教えられるということは、日々のモチベーションが上がると話していました。
自分の流儀は譲らなくても、新しい出来事も受け入れてみる。そういう柔軟性のあるわがままな高齢者が長生きすると感じています。