「落とし所」を探っている首相と自民党幹部

唯一、具体的なこととし、派閥のパーティーの当面不開催と共に、自らが派閥から離脱したことを明らかにした。だが、首相が派閥から離脱することや現職大臣が政治資金パーティーを開催しないことは、過去の政治とカネを巡る数々のスキャンダルを受けて申し合わされてきたことで、それを破っていたのを元に戻したに過ぎない。岸田首相は「まずは、第一歩として」と言ったが、「一歩」でも何でもないのである。

つまり、岸田首相を含む自民党幹部は東京地検特捜部の捜査の流れを見て、落とし所を探っている感じだ。派閥のパーティー券をノルマ以上に販売してキックバックとして受け取った金額が大きいごく一部の政治家だけが政治資金規制法違反(収支報告書の不記載・虚偽記載)として有罪になって幕引きとなることを望んでいるのではないか。2023年1月に裁判で有罪が確定した薗浦健太郎・元衆議院議員はパーティー券収入など4000万円超の収入を記載しなかったとして罰金100万円、公民権停止3年の略式命令を受けている。今回も新聞が「不記載1000万円以上」などと金額にこだわるのは、金額によって検察が立件するかどうかが分かれると見ているからだ。

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古い自民党の悪しき慣行が舞い戻ってきた

国民からすれば、100万円の罰金というのは何とも「軽微」な罰則に見えるが、議員からすれば罰金よりも「公民権停止」が死活問題になる。選挙に立候補できなくなるからだ。派閥の幹部が軒並み立候補できなくなると政界地図は大きく描き変わることになる。議員が頑なに口を閉ざしている理由はここにある。立件される金額が3000万円以上になれば、今報道されているキックバックの額では派閥の幹部は軒並み立件されることはない。つまり罪に問われないのだ。そうなることを自民党の幹部たちは望んでいるのだ。

だが、そうなれば、自民党はウミを出し切ることができず、「悪しき慣行」も当面は自粛するとして、いずれまた復活していくに違いない。民主党から政権を取り戻した安倍晋三首相(当時)は、繰り返し「古い自民党には戻らない」と語ってきた。ところが、世の中の政治とカネへの関心が薄れ、自民党の支持率が戻ると共に、古い自民党の悪しき慣行が舞い戻ってきた。岸田首相が派閥のトップに座り続け、せっせと資金集めパーティーを開くようになったのがそれを端的に表している。