自民党の派閥の政治資金パーティーの問題で、岸田首相が安倍派の閣僚らを事実上更迭した。法政大学の白鳥浩教授は「リクルート事件に直面した竹下登内閣は人心一新のために内閣改造を行ったが、かえってこれが裏目に出た。岸田政権も、内閣改造だけで政治とカネ問題から逃れることは難しいだろう」という――。
取材に応じる岸田文雄首相=2023年12月12日、首相官邸
写真=時事通信フォト
取材に応じる岸田文雄首相=2023年12月12日、首相官邸

昭和に起きた「ロッキード」と「リクルート」

自民党の「政治とカネ」の問題は、戦後日本政治の最大の課題の一つであったといってもよい。そして、それは時には政権の中枢を直撃してきた。1976年の「ロッキード事件」、1988年の「リクルート事件」を考えるだけでも、常に政権与党である自民党にまつわる「政治とカネ」の問題が取りざたされてきた。

リクルート事件の反省を受けた1990年代の政治改革において、「政治とカネ」の問題にもメスが入り、透明化が図られたはずであった。しかしながら、今回こうした問題が起こったとするとその改革も不十分であったことがわかる。

リクルート事件と同様に政権を直撃し、この事件は「令和のリクルート事件」といってよい。またリクルート事件と同様に、その広がりがどこまでかということが見通せない中で、2020年代の日本政治最大の事件となっている。

「パーティー券問題」は昨秋から指摘されていた

現在、与党は混乱の極みにある。与党最大派閥の安倍派を中心として、政治資金規正法違反に当たる「政治家のパーティー」の売り上げをめぐり、与党全体、そして岸田政権自体が揺れているのだ。

そもそも「政治資金」を獲得とする目的で開催される、この「政治家のパーティー」は、政治資金規正法第八条の二で規定されており、それ自体が違法とされるものではない。しかしながら、その政治資金にまつわる収入に関しては、政治資金収支報告書において、明らかにする必要がある。

こうした報告書において、収入に関して不記載、あるいは過少記載の疑いがあることが、派閥の政治資金収支報告書に関して明らかとなった。そもそもこの問題は、政党機関紙が昨年11月に問題提起しており、それを発端に大学教授が刑事告発に至ったという背景がある。最近になって明らかになったのではなく、長期的に問題が指摘されてきたものといえる。