「安倍派」更迭で政権延命を図った岸田首相

この臨時国会終盤になってから、にわかにクローズアップされてきた「政治とカネ」の問題であるが、年末の来年度予算編成の時期を直撃している。これは「リクルート事件」の対応を行ってきた竹下内閣と同様のタイムスケジュールである。

岸田首相は12月14日、内閣改造を行い、疑惑が指摘された松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、高木毅国対委員長らを事実上更迭した。

この人事は、閣僚から今般の「政治とカネ」の問題に関する罪を「安倍派」に背負わせることによって、政権を延命させるという岸田首相の意図があるだろう。実際、前日の13日には安倍派の宮澤博行防衛副大臣が「安倍派の組織ぐるみの裏金作り」であったことをメディアに公言していることもあり、この岸田氏の行動は一定の評価を得る可能性がある。

人心一新のための内閣改造が裏目に出た

しかしながら、新たな顔ぶれを見ると、無派閥の斎藤健新経済産業相はいるものの、やはり、後任人事も自派の岸田派(林芳正新官房長官)、実質政権オーナーの麻生派(松本剛明新総務相)、総裁選に色目のない少数派閥森山派(坂本哲志新農林水産相)など、岸田首相が派閥の論理から抜けられていないことは明らかだ。

さらに、この内閣改造には、平成のリクルート事件をみれば懸念もないわけではない。当時の竹下内閣は人心一新のために1988年12月に内閣改造を行ったが、かえってこれが裏目に出た。

改造した内閣においてもリクルートからの献金を受けていた疑惑が噴出し、昭和から平成をまたいだ竹下内閣も、平成初の予算を決定して退陣に追い込まれたのだ。