「自民党は悪しき慣行と決別すべきだと思います」

「当たり前と思ってやってきたことが世間から指弾されているわけですから、自民党は悪しき慣行と決別すべきだと思います」

自民党議員に長年仕えてきたベテラン秘書はそう語る。

自民党の派閥が開いた政治資金パーティーを巡る東京地検特捜部の捜査が本格化している。関係する議員秘書だけでなく、議員本人からの事情聴取が始まり、安倍派(清和政策研究会)や二階派(志帥会)の事務所などが家宅捜索を受けた。問題は派閥のパーティー券収入の不記載という世間から見れば「軽い罪」で終わるのか、それとも自民党が長年抱えてきた闇が暴かれ、「悪しき慣行」と決別することができるのか。

「志帥会」(二階派)事務所の家宅捜索に入る東京地検特捜部の係官ら=2023年12月19日午前、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
「志帥会」(二階派)事務所の家宅捜索に入る東京地検特捜部の係官ら=2023年12月19日午前、東京都千代田区

自民党政治家とカネを巡る問題は、政権の足元も揺るがせている。岸田文雄内閣の支持率は朝日新聞の調査で23%、毎日新聞では16%にまで落ち込んだ。自民党の支持率も朝日23%、毎日17%と急低下している。内閣と党の支持率の合計が50を下回ると政権は倒れるとする故青木幹雄幹事長が唱えた「青木の法則」にいずれもヒットした。本来ならば首相を交代させ、「表紙を替える」ことでイメージ刷新を図るところだろうが、疑惑が安倍派など一部にとどまらず自民党全体に波及する可能性がある中で、そうはなかなか踏み切れない。不甲斐ない野党の支持率が上がらないことを祈るばかり、といった様子だ。

自民党議員たちにとっては長年当たり前のことだった

それぐらい今回の問題は自民党議員たちが長年当たり前のことと思ってきた「慣行」だった。だが、現段階では岸田首相も自民党幹部もその「悪しき慣行」を一掃しようと動いている気配はない。

12月13日の国会閉幕後に記者会見に臨んだ岸田首相は、「総理総裁として政治の信頼回復に向けて、自民党の体質を一新すべく、先頭に立って闘ってまいります。これが自分の務めであると思い定めています」と述べたものの、その声に力はなかった。事実の説明などもできず、「改革については、これから確認される事実に基づいて明らかにしてまいります」と述べるにとどまった。

事前の報道では、安倍派閥を含む自民党のすべての派閥を解散することで国民の信頼回復を狙うという説も流れたが、記者会見では派閥の先行きについては何も言及することができなかった。結局、国会審議を通じて繰り返した「捜査に差し支えるのでお答えするのは控えなければならない」という姿勢を変えなかったわけだ。