かつての派閥領袖の資金分配モデルを「システム化」

なぜ、派閥はそんなにしてまでカネを集める必要があるのか。

かつて自民党の派閥領袖は「餅代」や選挙の「軍資金」を与えることで、議員を配下に置いてきた。選挙事務所に激励に来る時は紙袋にぎっしり詰まった札束が差し入れられたのもそう古い時代の話ではない。もちろん、そうしたカネは領収書のいらないカネだ。近年、派閥の結束力が弱った背景には、領袖たちが配るカネを調達する力がなくなったことが大きい。

今は多額の政党助成金が議席数に応じて政党に配分されるようになった。その分配権を握る党の幹事長が大きな力を持つようになったのはこのためだ。派閥の領袖は党から分配されるカネを派閥所属の議員に分配するが、原資は潤沢とはいえず、何らかの方法でカネを集めなければならない。それが派閥の政治資金パーティーということになる。ノルマさえ達成すれば、後は議員にキックバックする。そのカネは収支報告書に載せないので、領収書のいらない使い方自由の金になる。かつての派閥領袖の資金分配モデルをシステム化したわけだ。

不平等なカネの配分
写真=iStock.com/Olivier Le Moal
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「政党支部」が政治資金団体になっている

今回明らかになったようにパーティー券を購入したのが政治資金団体の場合、その団体の政治資金報告書には支出先が明記されていた。一方の派閥の政治資金報告書と付き合わせれば「不記載」が判明するわけだ。だが、自民党派閥のパーティー券購入の中心を占めると見られる企業が購入者だった場合、20万円以下ならば名前が出ることはないので、付き合わせは不可能だ。捜査の過程で派閥側の議員別キックバック額などが出てくれば、企業を含めた購入の不記載が見えてくるはずだが、そうなると不記載額、つまり裏金化した金額はさらに膨らむ可能性がある。

「悪しき慣行」は他にもある。自民党は選挙区ごとに「政党支部」を置いており、これが政治資金団体になっている。今回発覚したのは安倍晋三氏が代表を務めていた「自民党山口県第4選挙区支部」が、妻の安倍昭恵さんによって「相続」されていたというもの。安倍氏が死去した2022年7月8日に、安倍後援会である「晋和会」と共に、昭恵氏が代表に就任していたというのだ。その後、選挙区支部など関係する政治団体から多額の資金が晋和会に「寄付」され、支部が解散した時点では資金はほぼ使い果たされていた。