アメリカの医療制度と日本の決定的な違い
日本の専門医があまり信用ならない根拠はほかにもあります。それは、学会の委員をしている教授が専門医になるための試験問題を作っていることです。
教授たちは基本的には臨床に、そこまで詳しくない人たちばかりなので、問題を作っても、実際の臨床とはかけ離れた理論重視の内容になることが多いのです。その試験にパスできるのは、同じように細かな知識だけが豊富な医者ばかりで、臨床に強い医者とは言い難いのです。
ちなみにアメリカの場合は、大学教授は医者というよりも研究者として扱われるので、専門医の認定には原則的にタッチしません。専門医の認定試験は、実際にそれぞれの科で臨床経験が豊富で優秀な医者が作るので、現場に立つ医者として必須知識がなければパスできないのです。だからこそ、専門医といわれる人たちには高い期待が集まり、実際に彼らが治療に当たった際は、良い結果を出すことができます。
こうしたアメリカの医療制度に対する姿勢は、日本の専門医の団体が大きく見習うべきところではないでしょうか。
超高齢社会で総合診療医がいない恐怖
本来ならば、専門分野ではない領域であっても、患者のニーズがある以上は新たに勉強するべきです。しかし、これまで専門ばかりを極めてきた医者たちは勉強をする気がないし、新しい知識をインプットしようともしない。
これまでの時代は、医者たちが専門外のことに不勉強でもなんとかなっていた部分はありました。かつての日本の人口構成比は、60歳未満の若い年代層が多数派でした。若いうちは、病気にかかっても、一つか二つ程度。だからこそ、病気にかかった際には、専門医による臓器別の診断を受け、その病気をピンポイントで治すほうが健康な体を維持できたのです。
しかし、時代は変わり、現在は人口の30%が65歳以上となる超高齢社会です。若い人々はあまり病気にならないため、病院に通う患者の50~60%は高齢者です。高齢者の場合は若者と違い、一つの病気だけではなく、高血圧や高血糖などをはじめ、三、四種類の病気を同時に患っていることも珍しくありません。
もし、専門知識にばかり特化した医者たちが、専門外の治療をガイドラインに沿って行った場合、一種類の病気に対して三、四種類の薬を出すのが当たり前になります。
そうすると、仮に四種の病気を患っている患者さんであれば、十五種類ほどの薬を処方する必要があります。薬が増えれば、さまざまな副作用が生まれ、逆にその人の生活の質を下げるきっかけにもなりかねません。