患者の臓器は分かっても、体全体のことはわからない

これが総合診療医であったなら、「十五種類の薬を飲むとさすがに体に悪影響があるので、体に害が出ない範囲の薬の量にしますね」「この病気は命にかかわる病気ではないので、まずは優先順位の高いこの三種類の薬だけにしておきましょうね」などと、その患者さんの「臓器」ではなく、「体全体」のことを考えて治療します。

だからこその「総合診療」なのです。

本来ならば、専門の科を複数回るのではなく、総合診療を行う総合診療医の元でトレーニングを受けるべきなのですが、残念ながら、今の日本の大学医学部には、総合診療を教えられる医師がほとんどいないのが現状です。

たまに総合診療科を設置している大学病院もありますが、そのスタッフはとても少なく、新たな総合診療医を育てる教育体制が整っているとは言い難いでしょう。

医者を選ぶポイントは総合診察ができるか

今後、シニア世代の方々が医者を選ぶ上で、「その医者が総合医療のわかる医者かどうか」という点は非常に重要になってくるはずです。かかりつけ医を探す際は、「この人は総合的に人を診察できる人なのか」を知るために、その人のキャリアをしっかりと見て、「総合診療の経験があるのか」を重要視してほしいと思います。

和田秀樹『医者という病』(扶桑社新書)
和田秀樹『医者という病』(扶桑社新書)

また、日本の医療を進歩させるには、文部科学省なり厚生労働省が大々的に介入するしかないと私は思います。高齢者を適切に診察する医者を増やさず、専門分化型の医療を続けているようでは、結果は思わしくないのに、今後の財政は破綻するに決まっています。

ここまでご紹介してきたように、なにせ専門分化型の治療は、コストが高い割には結果が伴わない。

総合診療のきちんとした研修を受けていない医者は、開業できなくする、公的な保険のお金は出さないなどのシステムを模索すべきではないでしょうか。

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