日本では「高齢ドライバーの暴走事故」が相次いだことで、高齢者への免許返納が呼びかけられている。医師の和田秀樹さんは「多くの識者は暴走事故の原因を『高齢による運転能力の低下』としているが、そうだとすれば欧米で同じ問題が話題にならないのはおかしい。原因は日本特有の薬漬け医療にあるのではないか」という――。
※本稿は、和田秀樹『医者という病』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
薬を大量に飲めば毒になる
日本の医者は「専門医」ばかりで「総合診療医」がほとんどいないため、大量の薬を飲んでいる高齢の方は少なくないでしょう。しかし、高齢になると薬の過剰摂取は、より一層慎重になるべきだと思います。
それは、若い頃に比べ、薬の効果が薄れていくのに時間がかかるからです。薬を飲むとだいたい15~30分後に、血液中の薬の濃度が最も高くなります。その後、薬の成分を肝臓の分解や腎臓の排泄を経て、8時間から半日ほど経過すると血中濃度は半分くらいになります。これを「半減期」と呼びます。
多くの方は薬をもらったら、一日に2、3回飲むように指示されると思いますが、これは血中濃度が半分くらいになった半減期に次の薬を飲むことで、血中濃度を一定に保つ狙いがあるからです。
若い人ならばこのサイクルで薬を飲むのは問題ないのですが、高齢になってくると、そうはいきません。
年齢が上がるにつれて、体力の衰えと同様に腎臓の消化器の働きも衰えて、薬が体外へ排泄される時間も当然延びていきます。年をとってくると肝臓の機能が落ちるので薬を分解する時間が長くかかります。
若い頃は半減期が6時間だった薬でも、高齢になると半減期に至るまで12時間以上かかるなんてことはざらにあります。その場合は、若い人と同じように薬を飲んでいては、体に薬が蓄積することになるので、量や飲むサイクルを調整する必要があります。