血圧や血糖値やナトリウム値を下げすぎると意識障害が起きます。そのほかさまざまな薬の副作用で意識障害が起きるのです。これは体が起きているのに頭が寝ぼけているような状態です。

昨今、高齢者ドライバーの暴走事故が取りざたされていますが、こうした事故が話題になっているのは、世界中で日本だけです。欧米では高齢者の暴走事故は、ほとんど話題になりません。

大半の高齢者の暴走事故は、普段真面目に安全運転している人が、その日に限ってものすごいスピードを出し、信号無視を2つくらいして人を殺してしまうようなものが報じられています。

多くの医者を含めた識者といわれる人たちは「高齢による運転能力の低下だ」と結論付けていますが、高齢者専門の医者からすれば、明らかに意識障害によって引き起こされたのだろうと推測できます。高齢者の臨床に携わり、日頃から高齢者の意識障害を見たことがある人ならば、すぐに想像できることです。

オペ室へ向う医療従事者たち
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日本の医者は「薬の副作用」を軽視している

実際、入院患者の10~30%にこの手の意識障害が起こり、高齢者はもっと多いとされています。もちろん家にいる時にも起こりますから、車の運転中に起きたとしても不思議はありません。

しかし、高齢者医療の現場を知らない上にマスコミとテレビに出してもらいたい多くの医者は、それを年齢のせいと片付け、せん妄を疑いません。しっかりと原因を解明しないままに、ひたすら「高齢者の暴走事故が起こるから、シニア世代になったら免許を取り上げろ」とだけ叫び続ける。これも由々しき事態です。

先に挙げた例を見てもわかるように、多くの日本の医者は薬の副作用についてあまり真剣に考えていません。その大きな理由として考えられるのは、薬の副作用によって患者さんが亡くなることがあっても、医者が罪に問われないという法体制にあるでしょう。

もしも患者さんに副作用が出て何かあっても、製薬会社が罪に問われるだけ。実際に薬を投与した医者たちは「副作用について知らなかったのだからしかたない」「ガイドラインに従って処方しただけ」と言い逃れることができます。

アメリカの医者が薬の数を減らそうとする理由

自分が処方した薬で患者さんに何かあっても、自分は痛くもかゆくもない。ですから、日本の医者たちのほとんどは、薬の副作用に関する知識を蓄えようとしないのです。これは決して世界のスタンダードではありません。

アメリカの医者は、副作用を非常に気にします。仮に副作用が出て、患者さんの体に危険が及んだ場合、製薬会社のみならず、処方した医者も「副作用に対する認識が甘かった」として訴えられるからです。