近年は医療業界の人手不足によって、看護師の数も減っているため、人を増やす代わりに薬を増やしているという実情もあります。専門分化型の医療をやめて総合診療に切り替えれば、いま15種類ほど飲んでいる薬を3、4種類に抑えられます。そうすれば、薬代は減るし、体への負担が減って健康になるので、より多くの方が医者いらずで長生きできることでしょう。

手あたり次第に薬を出す医者を放置していいのか

これだけ悪い状況が重なっているのに、将来の病気予防と称して現在症状のない患者さんに、医者が薬を出しすぎる状態が改善されないのは、指導官庁としての機能を果たしていない厚生労働省の責任です。

アメリカの例ばかりで恐縮ですが、同国では、医療費は原則的に保険会社が出します。

保険会社側は、赤字になっては困るので、きちんとしたエビデンスのない薬を出すような医療機関に対しては、「その薬にはエビデンスがないのでその薬についてはもうお金は出さない」「複数の薬の相互作用のエビデンスがないので二剤の併用にはお金が出せない」などと指導します。

このエビデンスというのは、血圧を下げるだけではダメで、その薬を飲むことで5年後の脳卒中や死亡率を下げるという統計上の根拠のことです。

和田秀樹『医者という病』(扶桑社新書)
和田秀樹『医者という病』(扶桑社新書)

ところが、日本の場合は、公的な健康保険の審査がゆるいので、事実上のノーチェック。本来なら保険機構がエビデンスのない薬には金を出さないスタンスを取るべきですが、日本にはそれがありません。結果、無駄に薬が使われ続け、国民の医療費負担が増えていくばかりです。だからこそ、国会などで審議されることもなく、厚生労働省の省令によっていつの間にか給料から引かれている社会保険料の額が増えるという不可解な事態が起こっているのです。

余分な薬剤費を払うよりは、介護費用やリハビリ費用に回したほうが、高齢者のQOLは上がるはずですし、ケアする側の負担も軽減できるはずです。

問題点は、医者たちが手あたり次第に薬を処方するので、本当に必要な薬剤費がいくらなのかがわからなくなっていることです。現在、薬剤費は医療費の約4割を占めていますが、現状を放置していたら、比率が上がる可能性が極めて高い。今後数十年間にわたって、日本社会にはびこる大きな病巣になってしまうことでしょう。

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