変化の多い時代に「職務内容」を決めるのは非効率
「変動性」(Volatility)「不確実性」(Uncertainty)「複雑性」(Complexity)「曖昧性」(Ambiguity)それぞれの頭文字をとって「VUCA」の時代と呼ばれる今日、技術は日進月歩で進化し、市場は目まぐるしく動いている。消費財を生産する製造業を例にとれば、流行のサイクルが短くなった今日、消費者ニーズの変化に応じて絶えず異質な製品を市場に提供し続けなければならないし、需要の変化や経営戦略の変化に応じて必要な労働力の量・質も、仕事や能力の価値も日々変わってくる。
そのような変化に合わせ、その都度一人ひとりの職務内容を見直し、職務記述書を書き換えるというのは非効率である。もっとも、経営環境や経営戦略に応じて人材を入れ替えるにはジョブ型が適しているかもしれない。しかし企業側による解雇の規制が厳しいわが国では、いささか非現実的な話だろう。
ジョブ型導入には、幾重もの厚い壁があることが明らかになった。しかし、だからといって元のメンバーシップ型に戻すとか、両者の折衷に落としどころを探るのでは、いつまでたっても発展はない。そして、そもそも導入をめざしているジョブ型そのものが、はたして目標に値するものかを冷静に考えるべきだろう。