働き方改革では議論を避けて通れない状況

このようにわが国ではいまや、働き方改革といえば「ジョブ型」雇用導入の議論が避けて通れないような状況であり、「メンバーシップ型からジョブ型へ」の移行がもはや既定路線であるかのように喧伝されている。背景には年功序列制による人件費の負担と硬直した処遇制度からの脱却、DXをはじめとする高度専門職人材の獲得、グローバル標準の人事制度への転換といった経営側のねらいがある。またジョブ型の導入は前述した共同体型組織の見直しにつながるので、先に掲げた日本企業、日本社会の労働問題もその多くが解決できそうに思える。

ジョブ型の導入がこうした諸問題の解決につながると考えられる最大の理由は、ジョブ型では一人ひとりの分担が明確になるからである。

仕事の分担が明確になれば仕事の成果や貢献度もはっきりするので、仕事のプロセスや仕事の進め方は本人に任せられる。そのため仕事ぶりを管理したり、監視したりする必要性が小さくなる。したがってテレワークを導入しやすいし、裁量労働制やフレックスタイム制、ワーケーションなども取り入れやすい。どんな働き方をしようと、成果や貢献度さえチェックすればよいわけである。

テレワークをする女性
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

そして職務とそのグレードに応じて処遇が決まるため、能力と意欲があればいくつになっても働き続けられる。少なくとも理屈のうえでは定年制も不要になる。実際に年齢による差別が禁止されているアメリカでは、70代になっても普通に働いている社員は珍しくない。

日本企業が直面している課題を解決してくれそうに見える

いっぽう働く人にとっては、仕事の自由度が高まるだけでなく、「つきあい残業」などが減って仕事と私生活との調整がしやすくなり、キャリア形成も自律的に行える。結果として、エンゲージメントも高くなるはずだ。

このように日本企業、日本社会が直面している働き方の問題、すなわち共同体型組織やメンバーシップ型雇用に付随するさまざまな限界は、ジョブ型の導入によって大半が解決できそうだ。それが労働生産性や労働者福祉の向上につながるなら、ジョブ型はいまの日本にとって救世主になれる。こう考えるのも無理はない。

だからこそ「メンバーシップ型からジョブ型へ」という大合唱が起きたのである。