いい部分も悪い部分も見抜いていた

【社長】では、最後の質問をいいかな? 誰を面接官にすべきかの参考にしたいので、身のまわりで、自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ。

そのリーダーは、ちょっと考えていたが、やがて口を開いた。

安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)

【リーダー】まずAさん、洞察力と、営業力が素晴らしいです。続いて、Bさん、営業力はあまりないですが、人望があり、人をやる気にさせる力がずば抜けています。リーダーのCさん、現場を任せたら社長よりもうまいでしょう……すみません。そして、うちの部のDさん、新人なんですが、ハッキリ言って私よりも設計する力は上です。
【社長】ずいぶんと多いな。

社長はニコッと笑ってリーダーに言った。

【リーダー】当たり前です。皆私よりもいいところがあり、そして、私に劣るところがある。
【社長】わかった。ありがとう。

役員が退出し、私と2人きりになり、社長は誇らしげに言った。

「自分よりも優れた人」を活かせるかどうか

【社長】というわけで、面接官はアイツに決定だな。
【安達】そういうことですか……。
【社長】彼は器が大きいんだ。私よりも上かもな。私はまだまだ変なプライドがあるからな。
【安達】たしかに、面接官に変なプライドは邪魔ですね。
【社長】そうだろう。「身のまわりで、自分より優秀な人間を挙げてみよ」と言われて、挙げることのできた人数が、その人間の器の大きさだよ。
【安達】なるほど……。
【社長】今年こそ、採用をきちんとやりたいな。まあ、彼に任せれば大丈夫だろう。

そして、社長の予想通り、そのリーダーは素晴らしい人物を数多く採用した。時には応募者に教えを請い、時には応募者を説得し、八面六臂はちめんろっぴの素晴らしい活躍だったそうだ。ほんとうに優れた人物は、他の人の優れたところもよくわかるという。

世界の富を独占した鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーの墓誌にはこう刻まれているそうだ。

「自分より優れた者に協力してもらえる技を知っている者、ここに眠る」

最高の大きさの器を持つ人物の言葉だ。

【見えないところで必ずしていること】
まわりの人の自分より優秀なところを挙げられる、器の大きさがある
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