仕事ができる人にはどんな特徴があるか。経営コンサルタントの安達裕哉さんは「仕事の能力向上に近道はない。そして能力向上を実感しているほど、そのことを正しく理解して、日々研鑽を積んでいる」という――。(第2回)
※本稿は、安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
「仕事ができる人」は普段なにをしているのか
優れた技能やスキルを習得できるかどうかの本質とは、なんだろうか?
あるところに技術者がいた。彼はトップクラスの腕前を持ち、社内外で尊敬を集めていた。そして、なぜあのように生産性の高い開発ができるのか、皆はその秘密を知りたがった。あるとき、若い技術者たちは彼のもとに行き、「あなたのように早く開発をするための秘訣を教えてください」と頼み込んだ。彼は快く応じ、「勉強会を開く」と約束した。後日、開かれた勉強会には、新人や若手が数多く詰めかけた。皆、彼が「どんな優れたノウハウを用いているのか」と期待して集まっていた。
彼は、「自分がやっていること」をまとめた数枚の資料を参加者に渡し、皆に向かって言った。
【技術者】ここに書かれていることをできるようになるまで練習してください。
そこにはいくつかの基本的な処理、関数の使い方、設計のコツなどが書かれていたが、とくに目新しいものではなかった。皆は口々に言った。
【若手1】こんなこと知ってます。
【若手2】もっと、役に立つことを教えてください。
【若手3】前に習いました。
それを聞き、彼は言った。
【技術者】では、これ以上教えることはありません。結局のところ、スキルを上げたいならばたくさんつくるだけです。
【若手1】でも、できるだけ効率よく技能を身につけたいんです。
【技術者】たった3日で身につけたことは、皆が3日で身につけられる。技能の向上の方法は、人それぞれ、自分で見つけるしかない。結局のところ、人より絵がうまくなりたかったら人よりたくさん絵を描くしかない。