「良い人材」をどう見抜けばいいか
私が少し前にお手伝いした会社も、面接官の人選に苦労した会社のうちの1社だった。その会社では伝統的に、チームリーダーと役員が面接官をしていたが、私が見る限り、有能な人物はそのうちのよく言って半分程度、残りは年功序列で、能力にかかわらずその地位に就いた人物であった。そこで私はおせっかいとは思いながらも、社長に言った。
【安達裕哉】いまの面接官だと、なかなかいい人が採れないかもしれません。
【社長】うむ。それは知っている。今年は彼らの適性を確かめてから、面接官に登用する。
【安達】適性ですか? どのように確かめるのですか?
【社長】では一緒にお願いします。ちょうどこれから適性を確かめる面談だから。
そう言って私をその場に残した。10分後、1人の役員が入室した。
【社長】今日は、採用の面接官をやってもらうかどうか、少し考え方を聞きたくて来てもらった。いまからする質問に答えてほしい。
【役員】はい。なんなりと聞いてください。
私は、「どんな質問をするのだろう?」と、期待していたのだが、意に反して、社長は役員にあたりさわりのない、ごく当たり前の質問を投げかける。
【社長】どんな人を採りたいか? 応募者の何を見るか? どんな質問をするか?
「自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ」
応募者もそういった質問は想定済みらしく、あたりさわりのない、模範的な回答をする。
私は「どうしてこれで適性がわかるのだろう……」と、不思議だった。そして、20分程度の時間が経ち、社長が言った。
【社長】では、最後の質問だ。誰を面接官にすべきかの参考にしたいので、身のまわりで、自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ。
役員は不思議そうな顔をしている。
【役員】自分より優秀……ですか?
【社長】そうだ。
役員は苦笑しながら答えた。
【役員】まあ、お世辞ではないですが、社長、あとは○○さんです。
【社長】○○さんか、なるほど。まあ、役員のなかではたしかに頭抜けて優秀かもしれないな。ちなみに理由を教えてくれないか?
役員が理由をひと通り述べると、社長は「……うん、ありがとう」と言い、面談は終了した。その後、2人ほどの役員とリーダーに同じような質問をし、4人目の面接となった。彼はリーダーであったが、次期役員候補と目される人物であった。最初の役員と同じような質問が社長から投げかけられたあと、最後のお決まりの質問となった。