習ったことを実行できる人はほとんどいない

【若手1】でも……。
【若手2】そうかもしれませんが……。
【技術者】いい曲をつくりたければ、人よりたくさん曲をつくるしかない。効率のいい方法はあるかもしれませんが、だからといって、技能の向上に必要な時間が3年から1年になることはない。

【若手1】……。
【若手2】……。
【若手3】……。
【技術者】今日から毎日1時間練習すれば、1年後には何もやっていない人よりも365時間分、高い技能を身につけられる。10年なら4000時間近く。これはもう絶対に追いつかれない。それが、「卓越する」ということです。

私は長らく、さまざまな企業向けに研修を提供していた。もちろん研修で提供したノウハウや考え方は、それなりに練られたものではあったので、研修の満足度も9割を超えることがふつうであった。しかし、仕事で実際に成果を出すことに貢献できているかどうかはまた別の問題である。

追跡調査をすると、「研修で習ったことを実行した人」は約2割。これが現実の数値である。だが、その2割の方々は、「技能の向上」を確実に実感していた。結局のところ、仕事の能力を向上させるには近道はなく、時間をかける他はない。それは、最近では嫌われがちな「下積み」がどうしても必要であるということを如実に示している。

【見えないところで必ずしていること】
「下積み」を嫌がらず、成果を出すために実践し、持続する

「自分の手に負えない者」こそ採用すべき

人を採用することに関して、本田宗一郎の含蓄のある言葉がある。

「どうだね、君が手に負えないと思う者だけ、採用してみては」

「言うはやすく行なうはかたし」の見本のような言葉だ。本田宗一郎は「自分の手に負えない者」こそが、優秀で採用したい人物だと言っている。本田宗一郎の器の大きさが表れている。本田宗一郎のこの言葉は、採用の本質を突いているが、この採用方法はふつうの人には実行が難しい。ほとんどの会社は「手に負えない人」を採用しないため、社員以上のレベルの人は、その会社に来ない。能力の高い人物を採用できないのは、自分たちの器が小さいからだ。

だから、実際には「器の大きい人物」が面接官にならない限り、その会社の平均以上の人材すら、確保するのが難しいのである。さまざまな会社で採用活動を見てきたが、応募者を見極めてやろうと言っていた面接官が、その実、応募者に見切られているなんてことは枚挙にいとまがない。したがって、採用活動をうまくやろうと思えば、まず「面接官の人選」が一にも二にも大事である。

面接
写真=iStock.com/mapo
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では、「器の大きい人物」をどのように判定すべきだろうか?