1社しか経験がなく、45歳以上だったら即不合格
中小企業で1000万円の年収を出すところは相当スキルレベルが高くないと難しい。実は前述の50代の転職決定年収では400万~599万円が30%超と多い。
その理由についてエン・ジャパンの水河マネージャーは「40代、50代が採用されている背景には人手不足がある。本当は30代を採りたいが、採れないので年収はそのままで40代、50代に広げている。その結果、年収400万~500万円で転職する人が多い」と語る。つまり、500万円でも御の字ということだ。
中小企業の中には大企業出身の中高年の求職者に厳しい目を向ける人もいる。中堅小売業の人事部長はこう厳しい現実を語る。
「これまで中途で何人も大企業出身の人を雇ったが、いずれも1年も続かずに辞めている。共通するのは、口は出すが、手を動かさないこと。大企業では45歳を過ぎると、ほぼ実務をやらない。部下の優秀な人材に任せておけばよく、自分は旗振りだけやっていればよかった人たちだ。同じ会社で30年も勤務した人はそうした体質が染みついている。だから当社では履歴書が送られてきても、1社しか経験がなく、45歳以上だったら即不合格にしている。大企業とうちとでは仕事のやり方が違うし、結局、雇っても本当に上手くやってくれるかどうかは宝くじに当たるようなものだ」
大企業に比べて中小企業は仕事や責任の範囲も広い。そして社員と協調するチームワークも必要だ。東海地区の製造業の中小企業の社長から「大企業出身の人に総務部長として来てもらったが、うちは役職に関係なく全員が定期的にトイレ掃除もすることになっている。ところがその人は『トイレ掃除だけは勘弁してくれ』と言ったので、辞めてもらった」という話も聞いたことがある。
転職するとは、仕事のスタイルや文化も変わることだ。エン・ジャパンの水河営業マネージャーは語る。
「50代は非常に厳しい転職活動が待っていることが前提となる。100社に応募しても1社しか受からないことはざらにあることをまず覚悟する必要がある。そして企業が見極めるポイントはスキルに加えて、変化への適応力。仕事のやり方は大手とベンチャーではスピードも全然違う。適応力を見極めるためによく質問されるのが学習習慣だ。これまで経験だけで何とかなるという変化を好まない人ではなく、新しいことをインプットし、それを業務にどう活かし、自ら変化を起こしてきたかという質問をする。変化に適応できるかどうかも重要なチェックポイントになっている」
50代の転職はこれまでの惰性でうまくいほど甘くはない。