水をこぼした息子と一緒に「感情」「考え」「行動」を分析

ここで私自身が日常生活を通して実践した再評価の例をご紹介します。

再評価を実践する上で、私の日常生活の中ではなんといっても「子育て」というのは、親にとっても子どもにとってもいい学びの場になると実感しています。

これは、長男が3歳だった頃の話です。ある日私が仕事から帰宅したとき、息子は私に保育園で取り組んだ工作作品を見てほしかったようです。

でも、私は帰宅後やらなければならないことがあって、すぐに見てあげられず、息子は自分を最優先に扱ってくれないことに怒って、わざとコップの水を絨毯にこぼしました。

ここで余裕がないときであれば「なぜそんなことをするの!」と水をこぼした行いを注意していたと思います。

でも、そのときの私は息子を抱き上げて「今何が起きたか一緒に考えてみよう」と言いました。怒りという感情に任せるのではなく、息子と一緒に「今の状況を再評価してみよう」と試みたのです。

私は再評価をする際には、その状況に対して抱く「感情」、感情の元になっている「考え」、そしてその結果生じる「行動」に分けて分析するようにしています。

息子の気持ちを聞くと「(ママが見てくれないから)悲しかったし、怒りたくなった」と言いました。これはそのとき湧いた感情だとわかります。

さらに「どうして悲しかったの?」と聞くと「ママにとって自分は一番大切なものではないと考えたから」(考え)と答え、「だから水をこぼした」(行動)と話してくれました。

私は「ごめんね」と言った後、すぐに見てあげられなかった理由を説明しました。そして、息子の怒りや悲しみの感情に理解を示しながらも、息子の「考え」の部分は間違っていると伝えました。

「ママが帰ってきてから一番に対応しないからといって、あなたが大切じゃないということではないよ。どうしても一番にできなくても、順番が変わっても、ママにとってあなたは一番大切なもので変わらないよ。だから一緒に水を拭こう」と伝えました。

感情に先導されず、一番大切なメッセージを伝える

一緒に水を拭く息子は心なしか、少し幸せそうな顔つきをしていました。

ここでは、息子の怒りや悲しみという感情につながった「考え」を訂正したことで、息子の「感情」と「行動」をポジティブな方向に変えることができたのです。

写真=iStock.com/Akarawut Lohacharoenvanich
※写真はイメージです

「忙しいのに、あなたは困らせてばかり!」などと私自身の感情に先導される形で叱っていたら、子どもがどんな気持ちだったのかを知ることはできなかったでしょう。

あるいは、もし私が息子の「ママにとって自分は一番大切なものではないと考えた」という言葉に反応して、私自身が悲しみや罪悪感で支配されてしまっていたら、一番伝えるべきメッセージの「ママにとってあなたは一番大切なもの」という思いも、うまく伝えられなかったかもしれません。

子どもの思いを聞き、コミュニケーションの中に再評価を取り入れることで、私自身も感情的にならずに、お互いがハッピーな気持ちで一日を終えることができました。

自分が大人になり、自分や他人のさまざまな感情を認識するようになると、感情が生まれる心理的・脳神経科学的な背景などを子どもの頃に学校などで学べていたらよかったのにとつくづく思います。

それゆえ、私は機会があるごとに子どもたちには感情やそのコントロールについてサジェスチョンするようにしており、私自身の再評価の過程をシェアすることも心がけています。