脂肪肝、糖尿病、骨粗しょう症などにも
オートファジーの活性化は、感染症への抵抗力を高める可能性があります。また、スペルミジンは、歳をとって低下したがんに対する免疫を回復させます。これはオートファジーを介した効果なのかはまだわかっていませんが、その可能性が高いと私は考えています。
生活習慣病
脂っこい食べ物を食べすぎると、オートファジーの働きにブレーキがかかり、脂肪肝になります。脂肪肝の他にも動脈硬化や糖尿病(糖尿病の95%を占める2型)もオートファジーと関係があります。
例えば、インスリンを分泌する脾臓の特定の細胞でオートファジーに必要なたんぱく質の遺伝子を破壊したマウスはインスリンが出にくくなり糖尿病になりました。
加齢性疾患
パーキンソン病などの神経変性疾患や骨粗しょう症、加齢黄斑変性、腎臓の線維症などはオートファジーを活性化することで抑制できる可能性が高いでしょう。
オートファジーの働きが鈍ると悪化するとみられています。
肝臓がん
肝臓でオートファジーが働かないマウスはがんになるという報告があります。この実験からはオートファジーが肝臓がんを防いでいる可能性が高いといえます。ちなみに、ほかの臓器でオートファジーの機能を止めてもがんにはあまりなりません。
この理由はまだよくわかっていません。
心不全
心臓でオートファジーが働かないマウスは、歳をとったり、心臓に負担をかけたりすると心不全になることがわかっています。
オートファジーの働きの全貌はまだ見えていない
腎臓の病気
加齢性疾患である腎臓の線維症以外でも、血液中の尿酸値が上がってなる腎症(腎臓に傷みが生じて腎臓の機能が低下する病気)にも関係があることがわかっています。オートファジーの働きが悪くなると、腎症は悪化します。
また、健康なマウスでも腎臓でオートファジーが働かないと、歳をとった時に腎臓の機能障害を起こします。
これらはオートファジーが低下すると発症したり悪化したりすることがはっきりしている病気です。オートファジーがどのようにして病気を防いでいるかは病気ごとに違いますし、仕組みがよくわかっていないものもあります。
オートファジーの研究は人間と関係があることがわかってから飛躍的に増えました。そして、研究の多くはまだ途上にあります。これからオートファジーと病気の仕組みがいろいろわかってくるでしょうし、さらに多くの病気との関係もわかってくるでしょう。
オートファジーは神経細胞や内臓、筋肉、皮膚などあらゆる細胞に備わっているだけに、その働きの全貌はまだまだ見えていません。