いつ見ても健康で若々しい人は、何に気を付けているのか。生命科学者で大阪大学大学院の吉森保教授は「最近の論文では、人間は生物学的に150歳まで生きられる可能性が指摘されている。長生きするためには、細胞の働きを活性化させる『オートファジー』を高めることが必要だ」という――。

※本稿は、吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

オフィスの廊下で会話をするビジネスマン
写真=iStock.com/Chris Ryan
※写真はイメージです

薬は飲まないにこしたことはない

細胞の働きをよくするオートファジーと病気の関係がわかってきたことで、オートファジーを活性化させて病気を防ぐ薬の開発がこれから急ピッチで進むはずです。私(吉森)もその一助になればと日夜研究しています。

ただ、薬は一朝一夕にはできません。安全かどうかの見極めは非情に慎重です。

ですから、みなさんが考えるよりも実用化するまでに時間はかかります。10年、20年かかることも珍しくありません。

実験を重ねて、サルまでは実験で効果があっても、人間には効果がなかったというケースもよくあります。薬の開発は、言葉は悪いですが、博打ばくちの側面があります。

実用化にこぎ着けても副作用の問題がどの薬にもつきものです。特にオートファジーの効果が期待される病気は、感染症を除くとほとんどが慢性疾患です。

慢性疾患とは治療が長期に及ぶ病気です。薬も長い間にわたって飲み続けなければいけません。誰もがなるべくならば、そうした状況は避けたいはずです。

できることならば、薬は飲まないにこしたことはありません。薬を飲まないでオートファジーを高められたら最高です。

本稿では、副作用がなくオートファジーを上げられる方法を紹介します。全て明日からでも、読んだ直後からでも取り組めますので、是非参考にしてください。

人間は寝ないと死ぬ

オートファジーを活性化するには、食事はもちろん、運動や睡眠などの生活習慣の改善も欠かせません。そして最近、特に注目されているのが睡眠との関係です。

寝る子は育つとはよくいいましたが、睡眠は大人にも欠かせません。

そもそも、人間は寝ないと死にます。なぜ睡眠が必要なのか、睡眠中に何が起こっているのかはよくわかっていませんが、寝ないと死にます。眠れなくなる病気(致死性家族性不眠症)もあります。急にある年代から眠れなくなって、死に至ります。

睡眠は脳の休息だと思われがちですが、休息ではありません。寝ている間も脳はすごく活動しています。何をしているかはまだよくわかっていませんが、起きている間と違う活動をしていることはわかっています。

生き物が寝るのは当たり前だとも思われがちですが、神経がない生き物は寝ません。

ですから、睡眠は神経と深い関係があるのは間違いありません。ただ単なる休息ではなさそうなので、睡眠はいまだに生命科学上の大きな謎です。

いずれにせよ、睡眠は病気や寿命と関係しています。睡眠をとるのはもちろん、睡眠の質が重要ではないかと最近の研究ではいわれています。そして、そのカギをオートファジーが握っている可能性があります。