「ひたすら上げればいい」と考えるのは禁物
4、運動
適度な運動はオートファジーを活性化させるでしょう。中でもウォーキングなどの有酸素運動はより効果があります。
一日三食、よく眠る、発酵食品、適度な運動などなど。みなさん、気づかれたかと思いますが、オートファジーを高める生活に特別な方法はありません。むしろ、「昔から体に良い」と呼ばれてきた食事や生活がオートファジーにも効果があります。
オートファジーが広く知られるようになったのは最近であり、まだその働きは十分にわかっていませんが、私たちが昔から慣れ親しんできた暮らしが最も効果的なわけです。
『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)の冒頭でも説明していますが、食事や健康に関して極端な方法にはデメリットがあります。
ですから、オートファジーが体に良いからとオートファジーだけをひたすら上げればいいわけではありません。オートファジーは空腹時に上がりますが、これは生命の危機を感じて自らの栄養を分解するからです。
同じように放射線や紫外線を浴びた時や体温が急激に上下した時などにも上がります。つまり、ストレスを感じて生命の危険を察知すると上がる傾向にあります。だったら、ひたすらストレスを浴びればいいかというと、そうはなりませんよね。本来、そうしたストレスはないほうがいいわけです。
無理せずにほどほどにバランスよく。これが人生100年時代を生きるオートファジーとうまく付き合う上でもっとも重要な姿勢になるでしょう。
「マックス150歳まで生きられる」論文も
人間は生き物の中でも最も「進化」した生物になりました。今のところ、他の生き物との生存競争に明らかに打ち勝っています。数の面ではバクテリアなど人間より多い生き物は少なくありませんが、地球で最も優勢な生き物になったのは否定できないはずです。
ただ、人間はその過程で選択した死と老化に、今、逆らおうとしています。多くの人は「長生きしたい! 長生きしたい!」と願い、「老けたくない!」と叫んでいます。アンチエイジング商品などは大人気です。
実際、寿命も延びています。厚生労働省のまとめによると、2022年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳です。いずれも前年を下回りましたが、依然として世界的には高水準にあります。
つい200年ほど前である江戸後期の、岐阜県のある山村の平均寿命を調べた調査では、男女いずれも30歳にも到達しませんでした。当時は乳幼児の死亡率が非常に高かったとはいえ、寿命の延びは目を見張るものがあります。
人間の体は生物学的には120歳くらいまで生きられるとの仮説があります。最近では、いや150歳までいけるという論文も出ました。
環境の改善や医学の進歩により、人間の寿命はこのマックスに向かって延びています。ただ、老化は起こります。