※本稿は、ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
劇的な寛解をもたらす食事療法とは
今日の統合的がん医療の世界で、「がん患者にとってどのような食事がベストなのか」ほど激しい論争を巻き起こしているものはありません。一方は、野菜、果物、穀物が治癒に必要なすべての栄養素を供給すると主張する植物由来の支持者たちで、もう一方は、今流行りの、ケトン食を提唱する人たちです。これは、もともとてんかんの治療のために開発された高脂肪、炭水化物制限の食事法ですが、最近では、がんやアルツハイマー患者を助けるために用いている統合医療従事者の間で注目を集めています。
このような議論があるため、どの食事法が自分にとって最適なのかを見極めるのが難しくなっています。これまでの研究で、植物性由来、ケトン食、地中海食などの食事が健康に大きな効果をもたらすことがわかっています。
しかし、それぞれの食事にいくつかの欠点があることを示す証拠もあります。つまり、すべての人に最適な食事法は存在しない――万能な解決策はないのです。とくに最近がんなどの病気と診断された人にとっては、あまり聞きたくない話かもしれません。
しかし、上の3つの食事療法をすべて実践している人に、劇的な寛解がもたらされていることを忘れないでください。寛解者は、どの食事療法が自分に合っているかを判断する際に、3つの基準に頼る傾向があります。
彼らは、①検査の結果(たとえば、血液検査、食物の過敏性テストなど)、②新しい食事を試している間の症状の軽減、そして③その食事療法の利点(エネルギーの増加、健康的な体重など)に注目しています。
最終的に、これらの3つの食事療法に共通しているのは、砂糖、精製された穀物、加工食品の摂取を減らしながら、有機野菜をそのまま食べているという点です。このような食生活の変化は、炎症を抑え、免疫システムを強化し、がん細胞をより効果的に除去するのに役立つことが研究によって示されています。
私たちは自分が食べたものでできている
健康全般における食事の重要性を考えると、食事と栄養に関する知識は、すべての医師が身につけていることが望まれます。結局のところ、食事は、障害や早死にをもたらす喫煙や高血圧、肥満、運動不足などすべての危険要因を簡単に打ち負かします。残念ながら、食事や生活習慣に関連する慢性疾患の罹患率が上昇し続けているにもかかわらず、医学部で栄養教育に費やされる平均時間は過去20年間で減少しています。
インディアナ大学医学部が実施した新しい研究によると、医学生と医師は、現在医学部でおこなわれている栄養教育が非常に不十分であることに同意しているとわかりました。このことは、医師が食事の治癒力を信じていないのではなく、単にそれについてよく知らないということを示しています。
これは残念なことです。私たちは自分が食べたものでできていることは、研究によって何度も実証されているからです。科学的に見ると、食べ物の細胞は分解され、私たちの身体の細胞が適切に機能するために必要な燃料に変わります。もし私たちが「悪い燃料」を入れたら、私たちの身体は最適に機能することができません。「いい燃料」を入れれば、自分の健康状態を根本的に変えることができるのです。