2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。食生活・メンタル部門の第3位は――。(初公開日:2023年10月27日)
全米で23万部のベストセラー本を著したがん研究者ケリー・ターナー氏は、がんが劇的に寛解した1500以上の症例を分析。世界中の数百人ものがんサバイバーたちにインタビューした結果、奇跡的な回復を遂げた患者たちには、ある共通点があることがわかった。そのうちの一つが、「抑圧された感情を解放すること」だった――。

※本稿は、ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

ストレスや怖れを解放すると治癒能力は高まる

ストレスは、がん細胞を発見して体外に排出する役割を担う免疫システムを弱めることが、研究によって繰り返し証明されています。ストレスは免疫細胞だけでなく、体内のあらゆる細胞に悪影響をおよぼします。

幸いなことに、ストレスや怒り、怖れなどの感情を解放すると免疫システムが強化されることが何百もの研究により示されています。したがって、健康上の危機の際にストレスを制御する方法を見つけることは、劇的寛解者にとって不可欠なステップになるのです。

ストレスと同様に、怖れもまた、免疫システムを弱めたり、「硬直」させたりする感情の一つです。がん診断の重大さを考えると、劇的寛解を果たした人たちの間で、怖れが最も抑圧される感情の一つなのは驚くことではありません。とくに死への怖れは、がんと診断された瞬間から、患者に迫ってきます。

怖れに向き合うことは必ずしも簡単なことではありません。療法士や劇的寛解者たちは、怖れを抱き続けると身体が「締め付けられる」ようになり、エネルギーが滞る一方で、怖れは身体のバランスを取り戻すのに役立つという点で一致しています。

ストレスや怖れといった感情を十分に感じ、それを完全に解放することで身体はリラックスし、免疫システムの治癒能力が高まります。劇的寛解者の多くは、それを滝の下に立っているようなものだとたとえます。

感情というものは、状況に応じて降りかかってきますが、やがてそれは流れ出てあなたから去っていきます。もしあなたがいつも「感情の滝」の下に立っているとしたら、それは人生とそのすべての感情を最大限に感じながら、どんな感情的な荷物も溜め込まないということを意味します。そうすることで、過去にとらわれずに、今この瞬間にどんな感情も経験することができるようになるのです。

怖れは免疫システムを抑制してしまう

ここ数年、抑圧された感情を解放することの価値が、私たちの集団意識の最前線に浮上してきました。自分の感情についてほかの人と話し合ったり、そうした感情とうまく付き合う新しい方法を見つけることが、ますます受け入れられるようになってきています。

近年、注目を集めているのは、恐怖やトラウマに対するより深い理解、自己愛の重要性、そして未解決のトラウマから救うためのツールとして、身体を軽く叩くタッピングと、EMDR(眼球運動による脱感作・再処理法)の二つが出現したことです。

怖れを感じるたびに、自己治癒力のメカニズムがオフになります。怖れのようなストレスの多い感情は、体内でストレス反応を引き起こし、闘争・逃走モードに入り、免疫システムを抑制してしまいます。私の友人で同僚のリサ・ランキン医学博士は、ニューヨークタイムズのベストセラー『Mind Over Medicine』と『The Fear Cure』の著者ですが、病気における怖れの役割について話すことをためらいません。

「健康で長生きしたいのであれば、何を食べるか、運動するかどうか、ビタミンをどれだけ摂るか、悪い習慣をどれだけ持っているかよりも、怖れに対処することのほうが間違いなく重要です。多くの病気の根源に、抑制されていない怖れがある可能性を示唆するのは極端だとは理解しています。

これらの病気に生化学的な原因がないと言っているわけではありませんが、怖れは生化学的に有害な影響を受けやすくして、身体の自然な自己回復のメカニズムを不活性化させることを示唆しているのです。

さらに重要なのは、これについてあなたには何かできることがあるという点です。怖れと正しい関係を築くには、怖れと仲よくなり、怖れに関心を持ち、全身を乗っ取られることなく怖れに耳を傾ける必要があります。

そして、怖れている部分を落ち着かせることで、ストレスホルモンが消散され、癒やしホルモンである親密さの生化学的スープが劇的寛解を可能にするためのホルモンの舞台を整えるのです」

椅子に座って窓の外を見ているがん患者
写真=iStock.com/FatCamera
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