女性初の開発責任者

日産の志賀は「ダイバーシティを導入すると、波風が立ち最初は心地いいものではありません。しかし最初のヤマを乗り越えれば、間違いなく企業文化は変わる。違いを認め合うことで、内向きな文化は消え組織は活性化します」と語る。

国内で9月に発売された小型車「ノート」の開発責任者は女性だ。これは、日本の自動車メーカーではおそらく初めてのこと。当の本人、水口美絵チーフ・プロダクト・スペシャリストは言う。

「私の部下には、インド人の男の子がいます。お互いに片言の英語で話しますが、着眼点がスマートなので、彼を外国人だとか、入社がどこだとか意識したことはありません。優秀なのですから。また、日本からインドに行って頑張っている仲間も、日産にはたくさんいます。ダイバーシティと言うと、いかにもカッコイイのですが、私は“グジュグジュ”だと思っています。このグジュグジュが心地いいし、働きやすい」

各社の人事システムやカルチャー、トップにより、新興国戦略そのものは変わっていくだろう。技術力の違い以上に、会社としてのスタンスの違いで、明暗が分かれていくのかもしれない。

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環境技術をめぐる主な提携関係

一方、環境技術をめぐっては自動車メーカー間、さらには電池メーカーなどとの協業や提携も求められていく。「スカイアクティブ」技術を持つマツダの山内は、「いろいろな話がきます。最初から資本提携を狙うつもりはないが」と話す。

また、トヨタはBMWとの提携を拡大し、FCVへと大きく舵を切った。トヨタは15年に500万円以下でセダンタイプのFCV量産を計画する。「充電の必要がないのはメリット」と布野。次世代技術をめぐる提携はこれから本格化するが、どこと組むかは最重要になる。

益子は言う。「資本提携で成功したのは日産・ルノーだけではないでしょうか。成功の理由は、ゴーンさんが両社のトップを務めているからでは。当社は日産と業務提携し、新しい軽自動車の開発を進めています。燃費性能が高い軽を来年には出す。1社がすべての環境技術を担うのは無理があり、協業は増えていくでしょう。業務提携においても、互いのトップが人間的に理解し合うのは大切です」。

電池メーカーとの関係では、日産とNECが協業しリチウムイオン電池をつくり上げた。水面下での期間を合わせれば、ほぼ10年の協力関係だ。同じくスズキも、新型ワゴンRに搭載したリチウムイオン電池は東芝製だが、東芝の技術陣とは2年にわたり協業して開発させている。

「グローバルに出ていくときこそ、強固なアイデンティティがその人の基盤となる」と訴えるのは世界各地を渡り歩いてきたカルロス・ゴーンだ。新興国市場へと会社が出ていき、異業界とともに環境技術の革新を進めていくなか、強い個人が求められている。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(的野弘路=撮影)
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