部下から慕われる上司がやっていること

職場に、対照的な2人の上司、AさんとBさんがいたことがあります。同じくらいのキャリアで同年代、仕事能力でもほぼ同じくらいだと評価されていたのですが、部下からの人気度と信頼度には明らかに大きな差がありました。

Aさんの元にはいつもたくさんの人が相談に来ていました。Aさんの机は、連休明けになると、色んな人が持ってくるお土産でいっぱいになっていました。

一方、Bさんの周りはいつも静かで、人が寄ってきているのをあまり見たことがありませんでした。

Bさんの口癖は「まずこっちを向けよ」でした。相手が資料に目を落としながら話していると、それを下から覗き込むようにして「誰に話してんの?」と言ってきます。その威圧感が怖くて、私も含め少し距離を置いている人がたくさんいました。

Aさんにはまったくそういうところがなく、どんな相手にでも、自分がその人の方を向くことをつねに意識している人でした。作業中でも、話しかけると必ず手を止めてこちらを向いてくれます。どんなときでも体と心で向き合うことを大事にして、“気にかけてくれている”ということが全身から伝わってくる、大きな安心感を持たせてくれる人でした。

「正対」を“真正面からきっちり向き合う”と考えると、窮屈な状態を作り出してしまいます。

どんな状況でも“自分の体と心の意識を相手に向ける”と捉え、相手と話すときはそんな「正対」を心がけるようにしましょう。

聞いている姿勢を示さない相手には話しづらい

会話は話し手主導で進むと思われがちですが、話のリード権というのは、実は話し手よりも聞き手が持っているものです。

私が行っている研修で、これを体感していただくワークがあります。

二人一組になって、一人が話し手、もう一人が聞き手になります。話し手の人は何を話してもOKです。聞き手の人は余計なことを考えず、話を聞く意識だけ持ってもらいます。ただし、聞き手には石になってもらいます。話し手以外の場所一点を見つめまったく動かず、頷きや相槌も一切せずに話を聞いてもらうのです。

この状態で話し手に話し始めてもらうと、ほとんどのケースで3分もたたずに話し手のトーンがどんどん下がり、話すのを止めてしまう人も出てきます。後で感想を聞くと、「反応がないと話していて楽しくない」「本当に聞いてくれているのか不安になる」などの意見が多く出てきます。