養殖魚も大きな影響を受けている

このところ商社のもとには「日本が買ってくれる価格よりも中国が買ってくれる価格のほうが高い」と値上げを交渉されるようになった。日本がその交渉を断ると中国に振り向けるといわれる。これも経済合理性のため養鶏農家を責めるわけにはいかない。

日本では若鶏肉ではなく、これまで無視されてきた親鶏肉がミンチ材料に使われるようになった。それでも日本が買い負けるケースが多くなった。他国はブラジル産を選択していなかったが、ウクライナ戦争でウクライナからブラジルに切り替えたため全面的に品薄になったのだ。たまたま2022年は鳥インフルエンザもあり、鶏めしの素を作っているメーカーは供給不足から生産を停止せざるをえなかった。

これら食肉はもはや調達戦争の色合いさえある。食肉を忌避する宗教はあるものの、国連食糧農業機関のデータでは、一人あたりGDPと食肉需要はおおむね正の相関にある。新興国の経済成長が続く限り肉の奪い合いになる。

なお食料のうち養殖魚であれば諸外国の影響を受けないと考えるかもしれない。しかし昨今に生じたのは養殖業者の呻吟しんぎんだった。餌に含まれる魚粉の価格が上昇していたからだ。

肥料や家畜の餌も中国に依存している

魚粉はペルー産のカタクチイワシが原材料だが、そのペルー産を中国が高額で調達していた。中国は世界の豚肉消費量で圧倒的比率を占め、魚粉は養殖業ではなく主に養豚むけだった。

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中国の業者は魚粉がいかに高騰しようとも高額で予約注文を入れることで量を確保した。日本にとっては養殖のコストのうち6割強を占めるため影響は大きかった。養殖業者はいかに魚粉を使わないかを研究し、大豆の油かすなどを与える試行錯誤も続けている。

水産庁も新たな飼料原料の開発を目論む。「養殖業体質強化緊急総合対策事業」として養殖コスト低減対策事業に補助金を入れる。おそらく補助を提供するための関係者の努力は相当なものだっただろうが、それまで魚粉が採用されていたのは低コストだったからだ。代替案の低コスト化、安定調達体制など課題は山積みだ。

さらに、日本は食卓に並ぶ食品だけではなく、その農作物の肥料や家畜の餌も輸入に依存している。肥料のうち塩化カリウムはロシアとベラルーシから大量に輸入していた。これらが滞っているのは周知のとおりだ。また尿素は中国とマレーシアから、リン酸アンモニウムは中国からだ。中国からは調達できているが、将来にわたる安定性はあやうい。