食料品の値上げが続いている。調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんは「海外のバイヤーは日本の買い手よりも高い価格で仕入れている。食料に対する日本の購買力が落ちているという現実を直視するべきだ」という――。(第2回)

※本稿は、坂口孝則『買い負ける日本』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

東京の魚市場
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マグロを買い漁る「中国人バイヤー」

年始恒例のマグロの初競り。2023年には豊洲市場で青森の大間産本マグロに3604万円の値がついた。落札者は「銀座おのでら」を運営するONODERA GROUPと水産仲卸「やま幸」だった。また常連として「すしざんまい」の木村清社長の姿もあわせて全国ニュースで報じられた。

そのいっぽうで、中国人バイヤーの存在が大きくなっている。

水揚げ金額が日本一であると知られる焼津港では中国人バイヤーが跋扈ばっこする。もちろん跋扈といっても違法な行為をやっているわけではない。中国人のあいだではマグロの解体ショーが人気だという。中国の富裕層を中心に日本旅行などの経験から「マグロの旨さに気づいてしまった」ため、日本に質の高いマグロを求めて中国人バイヤーたちがやってきている。

中国人バイヤーは「かなりの量を求め」かつ「金払いがいい」。そうなると仲介業者も売らないはずがない。中国人バイヤーは中国人バイヤーで、中国の消費者が求める金額上限まで仕入れることは経済合理的だ。世界では一人あたりの魚介類消費量が50年で2倍になったのに対し、中国ではなんと約9倍にも伸びている。日本はその魚介類消費量は50年前と比べて下回っており、中国に肉薄されている状況だ。しかも、肉薄されているのは一人あたりだが、両国では人口がまったく違う。