太陽光パネル製造では中国が圧倒している

岸田首相の言葉や西村経産大臣の強い言葉の裏には、ペロブスカイト太陽電池への政府の期待の大きさがにじみ出ている。

現在の太陽光パネルの生産は、中国企業の独占が続いている。国際エネルギー機関(IEA)は、昨年7月に太陽光パネルの主要製造段階での中国のシェアが8割を超えていると発表した。

もっと問題なのは、同じIEAの発表にある、太陽光パネルの主要素材のポリシリコンやウエハーについては、2021年、中国は世界の生産能力の79%を占めるという点。その中国製のうちの42%は中国の人権侵害が指摘される新疆しんきょうウイグル自治区で作られ、強制労働と弾圧の関係すら指摘されることも言及しておく。

世界の再エネの鍵を握る、太陽光パネルの製造覇権を中国に握られたままで良いのか。IEAはこの不均衡状態に対して、世界各地でもっと生産を多様化しないと危機管理のうえで問題と、警鐘を鳴らしている。

厚さ0.13ミリ、紙のようにペラペラなパネル

しかしだ。世界的な再エネ需要の高まりで、中国の太陽光パネルの独占と生産拡大は止まらない。

その点でも、次世代の太陽光パネル技術に注目が集まるのは当然のことだし、しかも、日本発の技術で作られる新型太陽光パネルなのだから日本人としては胸を張りたくなる。政府も熱い視線を送る理由だ。

写真=東芝提供
ペロブスカイト太陽電池の例

私は「石川和男の危機のカナリア」(BSテレビ東京・毎週土曜日朝7時放送)で、実際に積水化学の研究開発者をスタジオに招き、ペロブスカイト太陽電池も持ってきていただいた。

「ペラペラに薄いですね」。司会の石川和男(元経産省・政策アナリスト)さんが、実物のペロブスカイト太陽電池の薄さと軽さに驚きの声をあげた。黒いビニール状の四角いそれは、大判の壁にかけるカレンダーくらいの大きさ。重さも紙のカレンダーより軽い。

スタジオの照明と太陽を模したスポットライトがペロブスカイト太陽電池に当たると、電線で繋がれた小型卓上扇風機が勢いよく回り出した。見ていた出演者やスタッフは目を丸くした。「こんなペラペラでも電気が起こせるなんてビックリだ」。石川さんがつぶやいた。まるで科学の実験のようだった。

そもそもペロブスカイト太陽電池は超軽量で、丸めたり、折ったり、曲面にも貼れる柔軟性を持つ。厚さは、たった0.13ミリの超薄型。このフィルム状で紙のようなペラペラの新型太陽電池は、いったいどのようにして生まれたのか。