これ以上、国内にパネルを設置することは難しい

この太陽光パネルの発明者は、毎年ノーベル賞候補にも挙がる世界的な科学者、桐蔭横浜大学特任教授の宮坂力さんだ。光を吸収する材料にペロブスカイト結晶構造(※)を持つ化合物を用い、2009年に宮坂さんらが開発に成功した。その後、発電量を上げ、次世代の太陽光パネルとしての注目度が急上昇している。

※チタン酸カルシウムの結晶構造を発見したロシアの鉱物学者・レフ・ペロフスキーにちなんで命名された結晶構造

島国で平地が少ない日本。飛行機で日本を上空から眺めると、すでにいたるところに太陽光パネルが貼られている。設置された太陽光パネルやメガソーラーを見たことのない人はいないだろう。日本の平地面積あたりの太陽光発電の容量は世界のトップクラス。この狭い国土でだ。

山肌を覆いつくすソーラーパネル
写真=iStock.com/Jinli Guo
※写真はイメージです

しかし、「日本で太陽光パネルを設置していくには、住民合意の取り付けや、環境問題のクリア、土地取得などが難しく、これ以上狭い国土に設置していくのは難しいと思う」と元経産省・政策アナリストの石川和男さんが指摘する通り、容易なことではない。

ちなみに、今年春には、国から太陽光発電の事業者として認定を受けていたのに、未稼働で滞留したままだった5万件が認定許可を失っている。石川さんは「認定取り消し」を経産省の大英断としながら「まだ認定取り消し件数は、1万〜2万件以上増えるのではないか」と続ける。

その難問を一発解決してくれる夢の太陽光パネルが、ペロブスカイト太陽電池なのだ。

政府が力を入れるのは当たり前だが、もっと私は力を入れてもいいと思っている。それほどまでに画期的な電池だからだ。

軽量で柔軟、そして変換効率も成長中

菅義偉前首相は、2020年10月26日の所信表明演説で、日本は2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)を目指すという、いわゆる「2050年カーボンニュートラル宣言」を出した。この大胆な取り組みを成功させるためには、野心的な研究開発や社会実装を展開していかなければならない。

特に、太陽電池の分野では、これまでシリコン系、化合物系、有機系の太陽光電池が開発されてきたが、95%以上がシリコン系となっている。理由はコストを含めて性能面において、シリコン系が圧倒的に優位だからだ。そこから、新しい太陽光電池は難しいとされてきた。しかし、有機系のカテゴリーのペロブスカイト太陽電池はここ数年で目覚ましい開発が進み、変換効率が約2倍に向上した。シリコン系に対抗できる太陽光電池として有望視され始めたのだ。

2022年11月の資源エネルギー庁の「次世代型太陽電池に関する国内外の動向等について」によれば、シリコン系太陽光電池のシェアは95%で変換効率は26.7%(出典:カネカ)、化合物系は高価なため人工衛星などの高付加価値用途に使用されている。変換効率は37.9%(シャープ)。対するペロブスカイト太陽電池は、変換効率17.9%(パナソニック)となっていて、併せて軽量で柔軟、そして低コスト化も視野に入る。