トタン屋根の上や建物の壁面にも設置可能

開発者の宮坂力教授は国立研究開発法人 科学技術振興機構の「ペロブスカイト型大洋電池の開発」報告の中で、「ペロブスカイト膜は、塗布(スピンコート)技術で容易に作製できるため、既存の太陽電池より低価格になる」と説明。また、「フレキシブルで軽量な太陽電池が実現でき、シリコン系太陽電池では困難なところにも設置することが可能になる」とその優位性を力説する。

この画期的な太陽電池を世界で最初に提案し、実用技術化プロジェクトのトップを走る宮坂教授の言葉に夢が広がる。

宮坂教授によれば、従来のシリコン系太陽電池は薄くすると太陽光のエネルギーが吸収できなくなるため、重く大きなパネルが必要となるそうだ。重たい太陽電池パネル設置のためには、強度のある屋根や設置場所を選ぶか、建物を補強するしかなかった。地面に設置する場合も、風雨に耐えられるように設置土台を堅牢にすることが欠かせない。

しかし、ペロブスカイト太陽電池は太陽光の吸収係数が大きいため、フィルム状の太陽電池が可能となるのだ。そうなると加工しやすく、どんなところにも設置できる。例えば、自転車を停める駐輪場のトタン屋根の上。建物の壁面。波打つ屋根などの曲面も大丈夫。屋外や屋内、建物の強度をあまり考えないでもいい。つまり、建築物のデザイン性をそこなわない。

主原料のヨウ素は国内で安定して確保できる

宮坂教授らの実験ではペロブスカイト太陽電池を100回以上曲げる試験を実施しても性能は安定していたという。耐久性についてはまだ、未知数だが、宮坂教授らは30年の耐久性を目指し研究を続けている。

もう少し、ペロブスカイト太陽電池のメリットを続けると、弱い光でも発電が可能。つまり曇り空でも発電できる。そして、この電池の主原料はヨウ素なのだが、日本のヨウ素生産量のシェアは、驚くことに世界の3割を占めているという。世界第1位のチリに次いで、なんと第2位のヨウ素生産国なのだ。私も知らなかった。

元素の周期表上のヨウ素、記号I
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レアメタルフリーだから、原料輸入で悩むことはない。原料の安定調達ができて、経済安全保障的にもメリットが大きいというわけだ。また、製造時の環境負荷が小さい上に、技術が確立化できれば高速での大量生産も可能だという。現在はヨウ素の他に、少量の鉛が必要なのだが、これも代替物質で補えることが最近の研究開発でわかっている。