4月4日、岸田首相が「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」で、「ペロブスカイト型太陽電池」と呼ばれる次世代パネルを2030年までに普及させる方針を打ち出した。この「ペロブスカイト太陽電池」、開発したのは日本人、宮坂力博士とその弟子だ。薄くて軽量、曲げることもできる。宮坂博士には、ノーベル賞候補の呼び声もあがっている。日本の発明なのに、実は世界はすでに大きく動き出し、中国では大量生産への動きも具体化しているのだ――。
極薄、軽量のペロブスカイト太陽電池。サンプルを手にもつ宮坂力さん。
撮影=牛山善太
極薄、軽量のペロブスカイト太陽電池。サンプルを手にもつ宮坂力さん。

折り曲げも持ち運びも自由の革命的太陽電池

「ペロブスカイト太陽電池」こそが次世代エネルギーの最右翼とにわかに注目を浴び始めている。基板の上に1000分の1ミリにも満たないペロブスカイトを被膜したもので、軽くて曲げられる厚さわずか8分の1ミリほどもない新型の太陽電池だ。ここ数年で急速に研究が進み、いまや雪崩を打って世界中の大学、産業が実現化に向けて動き出している。

従来のシリコン太陽電池は、その大きさと重量からどうしても設置場所が休耕田、屋根などに限られてしまう。その点、ペロブスカイト太陽電池は、屋根がなくても、マンションやアパートのベランダ、窓などで簡単に使える。しかも、曇りの日であっても発電できる。

災害時には持ち運びも可能だ。普及すれば、一家に一台というデバイスなのだ。ウクライナ侵略に端を発した世界的なエネルギー危機もまた、この極めて簡易で利便性の高いデバイスへの期待感を高める。

そんな世界中が注目する次世代エネルギーとなったペロブスカイト太陽電池の生みの親は、日本の宮坂力さん(69)。富士フイルムに20年在籍したのち、桐蔭横浜大学に移って研究を続けてきた工学博士だ。

すべて国内の材料だけで製造可能

宮坂さんは、東大大学院生時代から「色素増感太陽電池」の研究に長らく携わってきた。写真感光材料の感度を色素によって高める原理を応用した太陽電池だ。その色素をペロブスカイトに変えて実験し始めたのは2006年のこと。

当初は発電効率も低く、注目されることのない研究だったが、発電効率が上がり始めると、たちまち世界中の研究者たちがわれ先にと乗り出し、新エネルギーの有望株となった。そして、この1、2年でついに量産化の道筋が見えてきたのだ。

ペロブスカイト太陽電池は、資源に乏しい日本にとっても救世主となるエネルギー源だ。なぜならば、他のエネルギーと違って、日本国内の材料と技術だけでつくることができるからだ。

ペロブスカイトの合成原料である鉛は地中から収集できるし、ハロゲンを構成するヨウ素にいたっては世界第2位の生産国なのである。これまでのシリコン太陽電池のシリコンは、すべて輸入だったわけで、この点でもペロブスカイトがいかに日本に適したエネルギー源であるかがわかる。