※本稿は、宇佐美典也『電力危機』(星海社新書)の第4章「電力の未来はどうなるのか」の一部を再編集したものです。
東日本の電力不足は2030年まで確実に続く
東京エリアの需給逼迫時の電力システムの問題としては、以下の4点が挙げられる。
①低すぎるベースロード電源比率
ベースロード電源:発電コストが低廉で昼夜を問わず安定的に稼働できる電源。原子力、水力、地熱など。石炭火力も含まれるが最近はミドル電源に近い運用がされるようになっている。
②(昼でも)低いVRE電源比率
VRE電源:自然条件によって出力が変動する再生可能エネルギー電源。太陽光、風力など。
③電力貯蔵システムへの過剰依存
④他地域への常時供給依存
これらの全てが2030年までのスパンで解決する可能性はほぼないし、ましてやこの2~3年で解決する可能性はほぼゼロである。
原発再稼働でようやく現状維持
特に「①低すぎるベースロード電源比率」の問題は深刻で、現在目処が立っている柏崎刈羽原発や東海原発の再稼働が進んだところでベースロード電源の比率はそれほど上がらず、また火力発電の廃止のペースを考えると供給力の積み増しの効果も限定的である。
原発の再稼働によってようやく東京エリアの電力システムの安定性は現状維持ができる程度で、依然として問題解決には至らない。東京エリアの電力システムが上手くいかなければ隣接する東北エリアも必然的に巻き込まれ、電力不足は東日本単位とならざるを得ない。
仮に東京エリアの電力システムの問題が軽減されるとしたら、これから数年で急速に太陽光発電と電力貯蔵システムとして大型蓄電池の導入が進み、なおかつ、中部や東北という隣接地域の電力システムが健全化して他地域からの供給が増える、というようなストーリーが考えられるが、現状そのような動きは確認できず、それほど物事は都合よく進まないだろう。
特に蓄電池については、系統でVRE電源発の電力をピークシフトするために使うには未だコストが高すぎる。