LNG争奪戦が沈静化することはない
日本はLNGに関しては長期契約での調達が多いので、このような市況の変動による影響はこれまで最小限にとどめられてきた。一方このような日欧の苦しみをよそに、シェール革命で天然ガスの自給を実現したアメリカの電力料金は無風状態である。羨ましい。
今後に関してだが、ヨーロッパにおける天然ガス調達のパイプラインからLNGへのシフト、中国―インドの需要増、温暖化対策を見据えた上流投資の不足と、構造面においても需要面においても供給面においても、LNGの争奪戦が激化することが見込まれている。
当然値上がりも見込めるわけで、このような情勢で産ガス国が今まで通りの長期契約の更新に応じる可能性は低く、日本も徐々にこうしたスポット市場の乱高下の影響を受けていくことにならざるを得ない。
経産省が出した絶望的な予測
そして経済産業省はこの点かなり絶望的な予測を提示している。元々LNGの今後の需給については当面厳しい見込みが示されていた。(資源エネルギー庁石油・天然ガス課「化石燃料を巡る国際情勢等を踏まえた新たな石油・天然ガス政策の方向性について」)
世界におけるLNGの供給余力について、ロシアがこれまで通りの供給を続けた場合でも2023年~2026年には若干不足することが予測されていた。これが仮にロシアが供給をゼロにした場合は、2028年までLNGの供給力が大幅に不足する見込みとなっている。
実際にはロシアもLNGの供給を続けるため、ここまで極端なことにはならないだろうが、それでも影響は出ざるを得ず、しばらくは市場におけるLNG価格の高騰が予想される。
その中で徐々に電力会社の長期契約が終了していくので、火力発電への依存が大きい東日本は、これから電力料金のさらなる高騰を覚悟せざるを得なくなってくるだろう。
こうしたLNG価格の高騰は燃料費調整制度を通じて電力料金に影響してくるわけだが、電力料金が上がるもう1つの要因として卸売市場の高騰がある。
このメカニズムに関しては、kWhの入札が弾切れすると供給曲線が垂直に立ち上がり、一気に値段が高騰する構造になっている。
このような事態を起こさないためには、どういう手を使ってでも国内の老朽火力発電所を維持してなんとか供給力を保っていくしかないが、そうすると高コストな火力発電所から高値で電力を購入して延命させなければならない。するといずれにしろ電力料金は上がる、という結論になる。八方塞がりである。