「がんばってね」ではなく、「がんばっているね」が言えるか
2つめのNG行動は、部下の存在を認めていないことです。
上司による承認とは何でしょうか。
業務が順調にいっているときに、「うまくいって“いる”ね」と部下を労うこと。業務が遅れそうだったりトラブルにつながりそうな時に早めに部下に、「大丈夫? (何か手伝おうか?)」と確認すること。さらに、なかなか結果が出ないときや部下が試行錯誤しているときに、「がんばって“いる”ね」と結果ではなくその努力や姿勢を認めることだと私は思います。
反対に、部下を承認できていない上司たちが部下にかける言葉は、「うまくやってね」「がんばってね」ばかりです。そして、部下に労いや感謝の言葉をかけず、やって当然、できて当然という態度です。部下の状態は気にせずに、まるで部下の存在自体を認めていないかのようです。
上司からの承認欲求が満たされない部下は、産業医面談では、時間いっぱい仕事の話を聞くだけで、とてもスッキリした顔になります。
上司の皆さん、ぜひ、部下の存在を気にかけてあげてください。がんばってね、とがんばっているね、の違いをよく考えて、声かけをお願いします。
指導後に部下を「前向きな気持ち」にできるか
3つめのNG行動は、部下のやる気をなくす指導方法です。
上司の指導とは何でしょうか?
仕事は全てがうまくいくわけではありません。初めての挑戦の時はなおさらです。手取り足取り教えることがいいとは限りませんが、上司がフォローできる範囲内での苦労や失敗を許容し成長の糧としてもらい、大きなトラブルになり得ることは上司が早めに助ける必要があるでしょう。そのためには、まずは、上司自身が自分にフォローできる範囲を把握していなければなりません。自分の許容範囲内のことであれば、上司もきっと落ち着いて感情的にならずに、部下を指導できるでしょう。
そして、上司の指導で大切なのは、部下が壁にぶちあたっていたり失敗したりして指導した後に、部下が未来志向になれているかどうかです。
失敗してもその経験から学ぶことは大切ですので、「どうしてうまくいかなかったのか」と部下に考えさせることは大切です。同時に、「次はどうすれば繰り返さないのか」と部下に考えさせることは、もっと大切でしょう。終わったことをいつまでも責めるのではなく、次はどうするのかと、未来形で接すれば、部下は次こそはという前向きな気持ちに自然となれます。
数年後、Aさんが上司のポジションになった
時には叱ったり、否定しなければならない部下もいるでしょう。しかしそのような時も、部下の性格を否定するのではなく、具体的な行動や期限として次はどうするのかに焦点を当てることができる上司なら、部下は「叱られやすい=厳しくても指導が上手」と感じます。
その後Aさんは産業医面談に来ることはなくどうなったかはわかりません。が、数年後、当時の上司はすでに退職し、Aさんがそのポジションに昇格したと人づてに聞きました。
Aさんには部下をメンタルヘルス不調にさせない、いい上司になってほしいと思います。
今回の話が皆様のお役に立てば光栄です。