上司の役割は「情報提供」「承認」「指導」の3つ

職場における上司の役割は何でしょうか。

産業医の立場から言えば、上司とは、会社の組織図の中で与えられた役割にすぎません。そして上司の役割とは、部下への情報提供(共有)、承認、指導の3つだと思います。

部下とランチや飲み会をしたり、家族や趣味の話をして親睦を深めることは、いずれも3つの役割を円滑に行うための人間的関係構築手段にすぎません。決して上司だから偉いわけではありません。上司が人として尊敬されるか否かは、この3つの役割をこなす上司を、部下がどう判断するかなのです。

笑顔で外を歩く仕事仲間
写真=iStock.com/maroke
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実際にどのような言葉がけ等でこの3つの役割を上司が実践するかは、無意識ながら上手にできている人、管理職トレーニングなどで学んでできている人などさまざまです。できていない、または、やろうとしない上司たちもいます。

残念ながらAさんに対し、上司はいずれもできていないのかと感じてしまいました。順番に、この上司は何がNGだったのか見ていきたいと思います。

できる上司は「情報」を伝えるのがうまい

1つめのNG行動は、情報の出し惜しみをすることです。

上司には会社の方針や上層部の決定事項などの情報を、組織ピラミッドを介して部下に共有することが求められています。最近はメールや社内チャットなどのツールの普及により、必要な情報は全社員にすぐに伝えられるため、この点における上司の役割は減ってきていると思います。

そのような中、できる上司とは、単に情報をたくさん知っている(持っている)人ではなく、情報の持つ意味をわかりやすく説明したり、重要部分や不要部分に強弱をつけて伝えられる人になってきました。上司の役割の1つめは、情報を独り占めせず、部下に大きい絵(会社や部門の仕事)の中の、小さい絵(部下の仕事)を任せていることを伝え認識させることなのです。

しかしながら、情報量=自分の偉さと勘違いしているのか、部下に部分的情報しか与えず、自分の職場における優位性を保とうとしている残念な上司もいます。明確な原因がないのに気持ちよく働けていない場合、上司とこのような関係にあることを私は今まで経験してきました。このような上司たちは、決してハラスメント上司ではありませんが、部下からすると、なぜかやり難い、仕事が気持ちよく捗らないボトルネック的な存在となってしまいます。