部分ではなく全体に向き合う感覚が重要
しかし、観光客に摘んでもらっていたサクランボをいったい誰が、どのように収穫し、選果し、出荷するのか。そして山形のサクランボの通販は、やまがたさくらんぼファームだけが行っているのではない。そのなかでさらに多くの受注を獲得するためには、どのような魅力を通販商品にもたせればよいのか。
コロナ禍の発生を受けて、「観光客が来ないなら、eコマースの販売に切り替えればよい」と思いつくだけでは、経営としては不十分である。その実現には、事業の全体を考えれば、さらに多くの課題と向き合い、対策を講じていかなければならない。必要となるオペレーションとマーケティングを、コスト倒れにならないように確立しなければならない。
さらにいえば、コロナ禍の中で特需を仮に獲得できたとしても、それは一時的なものであり、その先のアフターコロナの日々にあっても新規顧客を獲得しながら、効率的な出荷が可能となることにつながる体制を編み出すことが望ましい。eコマースへの切り替えという部分ではなく、事業全体と向き合う経営感覚がなければ、危機からポジティブな側面を引き出し、つかむことはできないのである。
農業だけではない。部分ではなく全体に向き合うという経営の役割は、幅広い事業や組織に求められている。こうした経営が果たしている役割が少なくない。