競馬市場が急成長している。JRA(日本中央競馬会)の直近の売上高は3兆2539億円で11年連続の上昇。さらに地方競馬も1兆651億円と過去最高を記録している。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは「『WIN5』などの売り方の工夫と電子投票の普及という下地があったところに、『ウマ娘』の人気が追い風となって、競馬を楽しむ人がグッと増えている」という――。
第64回宝塚記念(GI)を制したクリストフ・ルメール騎乗のイクイノックス=2023年6月25日、兵庫・阪神競馬場
写真=時事通信フォト
第64回宝塚記念(GI)を制したクリストフ・ルメール騎乗のイクイノックス=2023年6月25日、兵庫・阪神競馬場

娯楽業の中で唯一成長している公営ギャンブル

コロナ禍はゲームや動画配信、マンガアプリに大きく味方をしたが、実は“公営ギャンブル”もまた追い風をうけた産業である。

公営ギャンブルは中央官庁が管轄し、競馬、競輪、競艇、オートレース、スポーツくじなどを相称するカテゴリーだ。

2021年3月に出た経産省の調査(第3次産業活動指数)でも、娯楽関連事業「映画館」「劇場・興行団」「スポーツ施設提供業」「遊園地・テーマパーク」「パチンコホール」など娯楽業全てがダメージを受ける中、“唯一急上昇した事業”として「競輪・競馬等の競争場、競技団」(競輪場、競馬場、オートレース場、競艇場の4業種)が挙げられている。

ほとんどがネットで賭けている

なぜ「外出」を基本とするロケーションをベースとした娯楽産業で、公営ギャンブルだけが成長基調となったのか。

簡潔な答えとしては「電話投票(PC・スマホ経由も含まれる)」が機能して、リモートでも賭けに参加する人がたくさんいた、ということになろう。

電話投票の仕組みは競馬で1974年に取り入れたところから始まり、全公営競技がどんどん取り入れていった。

2005年競馬法の改正によって、馬券販売委託が民間業者にも可能となり、楽天が参入。

競輪とオートレースではミクシィがインターネット投票アプリ「TIPSTAR」を2019年にリリース。2020年にはサイバーエージェントの子会社が運営する「WINTICKET」でも同様のアプリがスタートした。

コロナ直前の2019年時点で、すべての売り上げのうちで中央競馬は7~8割、競輪・オートレース・競艇は5~6割の電話投票経由(≒ネット投票)という水準まで上がってきていた。

これがロックダウン期間は競馬で9割、競艇・競輪・オートレース7~8割に到達した。もはや公営競技場にいって、その場で賭けを行うユーザーはマイノリティーなのだ。

家庭用ゲーム市場では、直近3年でオンライン購入が促進している。1本あたりのソフトでパッケージよりもオンライン購入のほうが粗利も4倍程度高い。そんなWin-Win(ウィンウィン)の状況が、ゲーム市場のみならず、この公営ギャンブル市場でも起こっていたことが分かる。

【図表1】公営ギャンブル、パチンコの売上高変遷
各公営競技関連法人の発表資料より筆者作成