なぜギャンブルに熱中するのか
東大名誉教授で歴史学者の本村凌二は趣味が高じて書き上げた『競馬の世界史』(中公新書)の中でこう語っている。
「1986年10月5日……凱旋門賞を見た。このレースを観戦した人は誰でもその日のことを生涯忘れないだろう……イギリス最強場ダンシングブレーヴがフランス最強場ベーリング以下の並みいる優駿を大外から一気に追い込んで振り払った……あの場面ほど感動を覚えたレースは今なおない。もう一度あんなレースにめぐりあえたら、この世に未練はないほどに思っている。」
彼がそのレースに賭け金を積んでいたかどうかは不明だが、膨大な知識を背景にした競馬ファンたちが、その競技によって感動と生きがいを得ているという事実もまた、確かなものである。