コロナ禍が追い風に

こうした中で、コロナ禍となる。プロ野球、Jリーグ、大相撲などが感染拡大を受けて次々と延期、もしくは中止となったが、競馬は無観客での開催を続けた。これに2005年以来整備されてきたネット環境が多いに寄与した。一部重賞レースでは前日でも投票が可能で、時間に制約されず家で投票する便利さを多くのユーザーが認知し、ネット投票サイトの利用客数は一気に増える。

さらに、地方競馬では早朝レース、ナイター、深夜レースなど、真夜中以外は、全国のどこかで何かしらのレースが行われた。競技場の営業時間や選手の稼働時間に縛られていたコロナ前と比べ、新しい市場を創造した。

ユーザーにとっても昼以外のほうがむしろ時間が余剰にあり、賭けに集中できる。さらには競技場で人を入れて、現金管理から飲食スペースまで管理する費用すら削減できる。

いつでも気軽に馬券が買える環境が整ったことで地方競馬もコロナ禍を契機に成長した。

【図表4】地方競馬売り上げ推移(NAR売り上げ推移)
NRAのデータを元に筆者作成

課金売り上げは1000億円

競馬市場活況において、この話題を欠かすことはできない。サイバーエージェントグループのゲーム開発会社Cygamesが2021年2月にリリースした『ウマ娘 プリティーダービー』である。

競走馬をモチーフとした美少女を育成し、競馬のようにトラックを走らせるこのゲームは、その世界観の異様さからも海外でも話題になった、実に“日本らしい遊び心”がふんだんに詰まったものだ。

『ウマ娘 プリティーダービー』
画像提供=Cygames
『ウマ娘 プリティーダービー』

2022年2月24日、プーチン大統領のウクライナへの宣戦布告が世界各国のTwitterトレンドを占領するなかで、日本だけが「#ウマ娘1周年」から微動だにしなかったことも大きな話題を呼んだ。

このアプリゲームは1.5兆円規模となる競争激しい日本のモバイルゲーム業界に彗星すいせいの如く現れ、2021年は年間の課金売り上げランキングで1位、2022年も2位となった。

国民的ゲームともいえる『モンスターストライク』『FGO』『パズル&ドラゴンズ』『原神』『Pokémon GO』などを抑え、一躍トップ作品となったこの作品が競馬業界に与えた影響は計り知れない。

年間1000億円という売り上げは1200万人が認知し、200万人がプレイし、89万人ものユーザーが課金した結果として生まれている(『ファミ通モバイルゲーム白書2023』)。

【図表5】国内モバイルゲーム課金売り上げランキング
筆者作成