先端的なトップ校では「医学部人気」に陰り

さらに、医学部は廃止して、歯科・薬学・介護・獣医など合わせて「健康学部」にでもして、医学などは大学院レベルでの、メディカル・スクール方式で養成すべきだと提案しており、この点は医療関係者でも多くが賛成してくれる。

そもそも、18歳時点で学力が優れているだけで、医学部に合格すれば、ほとんどが医者になれるというのがおかしい。官僚も大企業社員もジャーナリストも、大学3~4年生になってから適性があるのかを自分でも採用側でも確認してなるものだ。

だが、このところかすかにだが、希望の光が見えてきた。先端的なトップ校では、理IIIや京医に進む受験生が少しずつ減っているのだ。これは、医者の仕事などやりたくないのに、医学部に入ることを馬鹿馬鹿しいと感じる高校生が増えてきた表れではないだろうか。

理III合格者がトップであることが多い兵庫県の灘高校では、すでに数年前から「医学部離れ」が語られ始めていた。なにしろ、医学部卒業生の生涯収入は、理系大学院卒の平均より、数十パーセントは高いと言われているが、いまやベンチャー企業や国際金融の世界では、平均年収の何倍も稼ぐ人は珍しくない。

名門・開成高校の理III合格者はわずか3人

一時期は、理IIIに行って医者としての最低保証を獲得した上で、マッキンゼーなど外資系コンサルなどで働くのが最も賢いなどと言われたほどだった。その後、灘高校卒業生からベンチャーでの成功者が出てきており、「安全を重視しての医学部での勉強は無駄だ」という意識が、医学部離れにつながっているという見方がある。

灘中学校・高等学校(写真=Saoyagi2/CC-Zero/Wikimedia Commons

2013年に27人もいた理IIIの合格者は、21年に12人、22年には10人にまで減少した。今年は15人と少し回復したが、それでもかつてのように、理IIIと京医の両方に20人超だったような勢いはない。

そして、今年は東京大学合格者が148人と最多で、岸田文雄首相の出身校である開成高校から理IIIへの合格者がわずか3人になったことも話題となった。ここ5年間の合格者数は、10→13→10→6→3人となっている。生徒数は少ないが、東京大学合格率ナンバーワンといわれる筑波大学附属駒場高校でも減少気味である。