「地元にずっといたい」「贅沢したい」…

ところが、医者が優遇され過ぎていている日本では、経済成長の原動力になる分野に優秀な才能が回らない。頭の良い人が医者になるのは好ましいと勘違いしている人が多いが、他の理工系学部と比べると医学部教育では高度な数学や語学の知識は要求されない。

日本の医者が数学的な分析に弱く、海外の情報にも疎いのは、新型コロナ対策でも露呈したところで、それはそれで困るのだが、現状として、医学部生がせっかくの英語・数学の高い能力を使う機会は少なく、もったいないことだ。

それでは、医者への好待遇によって、医療界で求められている優れた人材が集まっているかといえば、そうではない。なぜなら、逆説的だが待遇があまりに良すぎるからだ。

待遇が悪いと、その仕事に興味があっても、よほど財産家で稼ぎの多寡は気にしない人以外には敬遠されるが、反対に、医者の場合は待遇がおいしすぎるから、現在の医学部には、医療に情熱がない人、医師として必要な体力がない人、地元に留まりたいとか贅沢な生活が好きだとか異性にモテたいとかいう人が多く集まってしまう。

医者になるべきでない人が医学部に集まる問題

私立大学の医学部の数千万円にも上る学費は、開業医が事業継承させるのでなければ回収不能だろう。それでも、それなりの中小企業経営者が、子どもに自分の跡を継がせるより医者にして消極的にお家安泰だけを図ろうとするケースや、娘を医者にすれば地元に留められるといった動機で医学部に送り込むケースも耳にする。

こうした学生が多いと医局が動かなくなるという懸念から、一部の大学が女性の合格者を抑え込んでいたことが問題になったが、根本的には、医者になるべきでない人が医学部に入りたがるから起きる問題だ。現場の医者は、他学部より際立って高い学力より、熱意と体力などが求められる仕事だ。

この問題を根本的に解決するには、医療政策を変更し、医者が安全有利な職業でないようにするしかないわけで、私はやや極論だが、医学部の偏差値が他学部並みになるまで診療報酬を毎年、一定割合で下げ続ければいいと主張しているくらいだ。