IT系の学科は人気・難易度が急上昇

それでは、どこに優秀な学生が向かっているのかといえば、目立つのはIT系である。

東京大学は、文I(法学部など)から理III(医学部医学科)まで大括りでの入学試験後、教養学部での成績で進路が決まるが(「進振り」という)、理Iからの進級で情報系の学科へ進むのはかなりの難関で、結局のところ、最初から理IIIに合格するのと同水準の難易度だと言われるほどになっている(この進路振り分けについては、公式にはいっさい点数が外部公開されていないが、学生が共有している情報で、だいたいのことはわかる)。

工学部計数工学科は鳩山由紀夫元首相の出身学科でもあるが、2010年ごろまでは、教養学部で下位20パーセントでなければ進めるといわれていた。ところが、10年くらい前から急上昇し、最近では、理学部情報科、電子情報工学科、機械情報工学科とともにだいたい上位10パーセントに入っていることが要求されるのである。

トップレベルの英語力・数学力を生かせる業界

また、京都大学工学部では、学科ごとに入試をしており、毎年大きく難易度は変動する。2010年ごろには、情報工学科の最低点は中程度だったのが、2017年以降は工学部でトップを維持している。他学科に大きな差を付けていることから、東京大学理Iより難関だとか、京都大学医学部合格者より偏差値が高い学生も多いと言われるようになった。

どう考えても、医学部よりこうした学科のほうが、トップレベルの英語力や数学力を生かせるし、いまもっとも有能な才能を必要としている分野なのだから、日本経済の未来を考えると歓迎すべき傾向だ。

さらに今年は、灘高校の卒業生から、東京大学文科一類に入学し、1年の秋からはハーバード大学に移って、26歳にして芦屋市長になった髙島崚輔氏のような人が注目された。これは、「灘→東大が王道」というこれまでの常識から脱却すべきであることの表れであり、良い傾向を助長するだろう。